公開日:
2026年11月3日De novo aneurysm formation and untreated aneurysm growth after microsurgical clipping: a 20-year prospective cohort study
Author:
Kawamoto S et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, Dokkyo Medical University, Mibu, Tochigi, Japan| ジャーナル名: | J Neurosurg. |
|---|---|
| 発行年月: | 2026 Jun |
| 巻数: | 145(4) |
| 開始ページ: | 890 |
【背景】
未破裂脳動脈瘤に対するクリッピング後は,局所再発だけでなく,長期的にみたde novo動脈瘤形成や未治療の動脈瘤の増大も重大な関心事であるが(文献1-4),その頻度は明確ではない.
本稿は獨協医科大学のKawamotoが,2003-2025年に自らクリッピング手術を行った無症候性の前方循環未破裂脳動脈瘤(症例)を前向きに追跡し,その頻度を求めた結果である.930例(平均年齢62.8歳,女性70.4%)を前向きに登録し,術後1年以上MRAで追跡できた896例を解析した.未治療動脈瘤なし症例では原則12ヵ月毎,未治療動脈瘤あり症例では6ヵ月毎にMRAを施行した.de novo動脈瘤は2 mm以上の新規動脈瘤,未治療動脈瘤増大は最大径1 mm以上の増加と定義した.
【結論】
クリッピングの対象となった動脈瘤の平均径は5.86 mmであった.部位はMCA 45.1%,ICA 30.2%,ACA 24.7%で,多発動脈瘤は29.4%,くも膜下出血家族歴は33.2%に認められた.
896例を平均8.31年追跡した結果,de novo動脈瘤は37例に生じ,年間発生率は0.52%,累積発生率は15年で8.9%であった.未治療動脈瘤160個のうち30個が増大し,年間増大率は2.48%,15年間で35.1%であった.
27例が追加治療を受け(年間0.38%),くも膜下出血は10例に発生し,4例がde novo動脈瘤,5例が未治療動脈瘤,1例が局所再発によるものであった.
【評価】
本研究の意義は,平均径5.86 mmの比較的小型の前方循環未破裂動脈瘤をクリッピングした患者を,統一性の高いMRAプロトコルで最長約21年定期的に追跡した点にある.de novo動脈瘤の年間発生率0.52%は既報メタ解析の0.30-0.35%より数値上やや高く(文献2,3),15年累積8.9%に達した.未治療動脈瘤の年間増大率2.48%は既報メタ解析と概ね一致するが(文献4),15年では35.1%が増大したことは臨床的に重要である.少し注意が必要なのは,対象集団は女性70.4%,多発動脈瘤29.4%,くも膜下出血家族歴33.2%である点で,“どちらかといえば動脈瘤を形成しやすい,あるいはくも膜下出血をおこしやすい患者集団”である可能性が示唆される.しかし,本論文の著者が約6 mm前後の動脈瘤のクリッピングを行う根拠として,そのような背景因子を考慮したのは当然と思われる.
一方,Fernsらは脳動脈瘤に対するコイル塞栓術後の276例を5年間MRAで追跡し,5年間のde novo動脈瘤累積発生率は0.75%,初回治療時から存在した未治療動脈瘤63個のうち5個(7.9%)に増大を認めたと報告しており(文献5),本研究の5年間のde novo動脈瘤累積発生率1.0%,累積増大率9.4%と類似している.すなわち当然のことながら, de novo動脈瘤発生や残存未治療動脈瘤の増大はクリッピング後に特有の現象ではなく,血管内治療後の患者においても認められることがわかる.
いずれにしても,ひとたび治療が必要と判断される脳動脈瘤が形成された患者では,治療法にかかわらず,長期的には新規動脈瘤の形成および残存未治療動脈瘤の増大が臨床的に無視できない頻度で生じ得ることは銘記すべきである.
もう一点,本論文で興味深いのは,前方循環未破裂動脈瘤に対してクリッピングを行った患者約900例を平均8.3年(最長は21年)経過観察しても,局所再発によるくも膜下出血は1例しか発生しなかったことである.局所再発によるくも膜下出血の頻度はおおよそ1/6,400人・年である.多くの場合,MRAではクリッピングされた動脈瘤の局所は金属アーチファクトのため詳細な観察が不可能であるが,局所の観察のためにあえて造影剤を使用したCTAを定期的に行うことの意義に疑問を投げかける事実かも知れない.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Brown MA, et al. A long-term study of durability and risk factors for aneurysm recurrence after microsurgical clip ligation. J Neurosurg 126:819–824, 2017
- 2) Giordan E, et al. Risk of de novo aneurysm formation in patients with a prior diagnosis of ruptured or unruptured aneurysm: systematic review and meta-analysis. J Neurosurg 131:14–24, 2019
- 3) Spiessberger A, et al. Formation of intracranial de novo aneurysms and recurrence after neck clipping: a systematic review and meta-analysis. J Neurosurg 132:456–464, 2020
- 4) Brinjikji W, et al. Risk factors for growth of intracranial aneurysms: a systematic review and meta-analysis. AJNR Am J Neuroradiol 37:615–620, 2016
- 5) Ferns SP, et al. De novo aneurysm formation and growth of untreated aneurysms: a 5-year MRA follow-up in a large cohort of patients with coiled aneurysms and review of the literature. Stroke 42:313–318, 2011
参考サマリー
- 1) 新生動脈瘤(de novo aneurysm)発生のリスク因子:19報告9,351例のメタアナリシス
- 2) 若年発症くも膜下出血生存者における新生脳動脈瘤の発生リスクは40年で30.2%
- 3) MRIでの動脈瘤壁全周造影はコイル治療後再発の独立した予測因子である
- 4) 未破裂動脈瘤が経過観察中に増大したらどのくらい危ないのか:トリプルSモデルの提案
- 5) ガドリニウムによる動脈瘤壁全周性造影は脳動脈瘤の増大または破裂の強いリスク因子である:中国83施設1,351例の前向き研究
- 6) 経過観察中の未破裂脳動脈瘤をなぜ治療することになったのか:スイス・アーラウ州立病院の経験
- 7) 未破裂中大脳動脈瘤に対する治療は未だにクリッピングファーストか:2011年以降の10報告1,664例のメタアナリシス
- 8) 成人頭蓋咽頭腫には内頚動脈の未破裂脳動脈瘤が多い:頻度,リスク因子,治療戦略
- 9) 多発性脳動脈瘤の特徴と背景因子:血液型や血液像も関係している
- 10) 家族性の未破裂動脈瘤の破裂率:8コホート9,511症例のメタアナリシス