血行動態障害を伴う無症候性頸動脈狭窄症に対する血行再建術(CEA・CAS)は認知機能を改善させない:CREST-2研究のCREST-H・サブ研究

公開日:

2026年11月7日  

Revascularization in Asymptomatic Carotid Artery Stenosis With Hemodynamic Impairment and Cognitive Outcomes: The CREST-H Substudy of the CREST-2 Randomized Clinical Trial

Author:

Marshall RS  et al.

Affiliation:

Columbia University Irving Medical Center, New York, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:42747834]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2026 Oct
巻数:336(16)
開始ページ:1416

【背景】

高度内頸動脈狭窄症では,無症候例においても,脳血行動態障害が認知機能低下と関連し,狭窄側の脳循環予備能低下がその進行を促す可能性が指摘されている(文献1,2).頸動脈内膜剝離術後に脳血流と認知機能の改善を認めたとの報告があるが,観察研究に伴う選択バイアスが指摘されている(文献3).
CREST-2試験は,70%以上の無症候性内頸動脈狭窄症患者を対象に,北米の多施設で実施された血行再建術(CASまたはCEA)と集中的内科治療(IMM)を比較した多施設RCTである(文献4).本稿のCREST-HはCREST-2試験の前向きサブ研究で,治療前の血行動態障害の程度によって,血行再建術による認知機能改善効果が影響を受けるかを検証したものである.

【結論】

解析可能症例は291例で,このうち認知機能低下は51例で認められた(血行再建術+IMM群25例,IMM単独群26例).この51例中,治療前と治療開始1年後に総合的認知機能検査が完結した41例では,認知機能zスコアは,血行再建群でも内科治療単独群でも数値上は軽度改善したが,いずれの群の平均改善量も,臨床的に意味のある変化と設定された0.49 SDには達しなかった.年齢,抑うつ,既往の梗塞,白質高信号などを調整後の1年間の群間差は−0.15 SDで,有意差を認めなかった(p=0.44).さらに,治療前の脳血流遅延(dTTP)が大きい患者ほど,血行再建術による認知機能の改善効果が高まるという事実も認められなかった(p =0.40).

【評価】

先行して発表されたCREST-2試験は,70%以上の無症候性内頸動脈狭窄症2,485例を対象としたRCTである.周術期の脳卒中・死亡および4年以内の同側虚血性脳卒中の複合評価項目は,集中的内科的管理単独群に比べCAS併用群で有意に減少した(6.0%対2.8%)が,CEA併用群では有意差を認めなかった(5.3%対3.7%)(文献5).一方,CREST-2試験の認知機能解析では,4年間の認知機能変化に治療群間の有意差を認めなかった(文献6).本研究CREST-Hの意義は,これに加えて,治療前の脳血行動態障害が高度であっても,血行再建術による認知機能改善効果が高まるという事実を認めなかった点にある.
CREST-2親試験および本CREST-H研究の結果から,現時点では認知機能の改善のみを根拠とする頸動脈血行再建術には十分なエビデンスがないということができる.しかし,これまでの動物実験や臨床観察研究では,脳血流の改善に伴う認知機能の回復が報告されており(文献7,8,9),認知機能障害を伴う高度内頸動脈狭窄症患者の中に,血行再建術によって認知機能が改善する患者群が存在する可能性は否定できない.今後は,狭窄の持続期間,脳循環予備能,脳酸素摂取率(OEF),側副血行の発達程度,白質病変や皮質萎縮の程度などを総合的に評価して,血行再建術によって改善が期待できる可逆的な低灌流性認知機能障害を有する患者群を同定する必要がある.

執筆者: 

有田和徳