レニウム・オビスベメダ(186RNL)封入リボソームの腫瘍内注入は再発膠芽腫のOSを延長:第1相臨床試験の21例

公開日:

2025年5月16日  

Convection enhanced delivery of Rhenium (186Re) Obisbemeda (186RNL) in recurrent glioma: a multicenter, single arm, phase 1 clinical trial

Author:

Brenner AJ  et al.

Affiliation:

Mays Cancer Center at UT Health San Antonio, San Antonio, TX, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:40055350]

ジャーナル名:Nat Commun.
発行年月:2025 Mar
巻数:16(1)
開始ページ:2079

【背景】

再発膠芽腫に対する従来の治療によるOS中央値は6-9ヵ月,12ヵ月までのOSは35%以下と不良で(文献1-4),新規治療法の導入が強く望まれている.
短い半減期で,DNA損傷を引き起こすベータ線と同時にリアルタイムイメージングを可能にするガンマ線放射能を有するレニウム・オビスベメダ(186RNL)は,頭蓋内悪性腫瘍の体腔内照射に特化したナノリボソーム封入核種である(商品名:REYOBIQ).
本稿は,メイズ癌センター(サンアントニオ)などで実施された,再発膠芽腫内に定位的に挿入された対流強化送達(CED)カテーテルを通じた186RNL投与の第1相臨床試験である.対象は21例.

【結論】

6つの用量設定コホートで最大22.3 mCiの186RNLが投与されたが,ほとんどの有害事象は186RNLとは無関係であり,いずれの設定用量も最大耐用量(MTD)に達しなかった.
21例全例のOS中央値は11ヵ月,PFS中央値は4ヵ月であり,従来の標準治療での生存期間(OS中央値約8ヵ月)を上回っていた.
腫瘍吸収放射線量 <100 Gyの9例ではOS中央値は6ヵ月,PFS中央値は2ヵ月であったが,腫瘍吸収放射線量 >100 Gyの12例ではOS中央値は17ヵ月,PFS中央値は4ヵ月と有意に延長していた.全症例の奏効率はSD 57.1%,PR 4.8%,PD 38.1%であった.

【評価】

再発膠芽腫の予後は極めて不良であり,1年OSは35%以下,1年PFSは2-10%と低い(文献1-4).これに対して再手術,再照射,ガンマナイフ,ニボルマブ,マルチキナーゼ阻害剤(レゴラフェニブ),遺伝子改変ポリオウィルス,腫瘍溶解性ヘルペスウィルス,改変緑膿菌外毒素のCEDによる注入など,様々な方法が試みられているが,それらの有効性に関するエビデンスは十分ではない(文献5-9).
本稿は再発膠芽腫に対するCED(対流強化送達)手技を用いた186RNLの腫瘍内注入が,重篤な副作用なく,再発膠芽腫の生存期間を延長する可能性を示している.
この186RNL(商品名:REYOBIQ)はテキサス州ヒューストンに拠点を置く米Plus Therapeutics, Inc.が開発している.同社では本稿の再発膠芽腫に対する186RNL投与のReSPECT-GBM研究だけでなく,髄膜播種に関するReSPECT-LMも進めている.本製剤は,2025年3月には膠芽腫および髄膜播種に対して米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグの指定を受けている.今後の動きに注目したい.

執筆者: 

有田和徳