公開日:
2026年1月7日Enhanced prediction of in-hospital mortality in intracerebral hemorrhage: impact of serial neurological and radiological reassessment with the ICH Score at 6 hours postadmission
Author:
Meyrat R et al.Affiliation:
Methodist Moody Brain and Spine Institute, Methodist Health System, Dallas, Texas, USA| ジャーナル名: | J Neurosurg. |
|---|---|
| 発行年月: | 2025 Oct |
| 巻数: | Online ahead of print. |
| 開始ページ: |
【背景】
脳内出血(ICH)患者の院内死亡を予測するICHスコアは,年齢(<80 vs ≥80歳)(0,1点),血腫量(<30 vs ≥30 cm³)(0,1点),脳室内出血の有無(0,1),出血部位(テント上 vs テント下)(0,1点),GCSスコア(0,1,2点)に基づき,合計0-6点のスコアを算出する(文献1).本研究では,血腫量の代わりにCT上での正中偏位(<5 mm,≥5 mm)(0,1点)を用いた修正ICHスコアを作成し,その有用性を検討した.
対象はダラス市メソジスト・メディカル・センターを受診したテント上脳内出血518例(平均年齢61.4歳,黒人47%,基底核出血91%)で,86%が高血圧を有していた.
【結論】
入院中死亡率は23%であった.死亡の独立予測因子には,高齢,低BMI,皮質部位の脳出血,血腫量 ≥30 cm³,脳室内出血有り,MLS ≥5 mm,低GCSスコア,高ICHスコア,高い収縮期血圧,高WBC数,高血糖,低ヘモグロビン,低ヘマトクリットが含まれた.
入院時のICHスコア(AUC 0.890)およびGCSスコア(AUC 0.879)は死亡に対して高い予測能を示し,6時間後にはその精度がさらに向上した(両者ともAUC 0.914).修正ICHスコア(AUC 0.897)は,原法ICHスコアと同等の予測精度を示した.患者の21%は6時間後にICHスコアが進行し,その場合の死亡リスクは2.4倍に増加した.
【評価】
脳内出血患者の生命予後(院内死亡)を予測するICHスコアは,年齢,血腫量,脳室内出血の有無,出血部位,GCSスコアに基づき,合計0-6点のスコアを算出するものである(文献1).ただし,血腫量が30 cm³以上であるか未満であるかの推定は必ずしも容易ではない.本研究の著者らは,血腫量の代わりに正中偏位の有無で代用し,修正ICHスコアを作成した.正中偏位は,透明中隔に沿って引いた矢状線と大脳鎌の前後付着部の中点を通る矢状線との距離(mm)として計測した.この距離が5 mm以上の時に1点,5 mm未満の時に0点を付与した.
確かに,正中偏位だけであれば,通常の水平断CTだけで容易に判断可能である.本研究は,この正中偏位を用いた修正ICHスコア(AUC 0.897)は,原法ICHスコア(AUC 0.890)と同様に高い精度で院内死亡を予測することを明らかにした.
本研究の死亡率23%は,内出血について他報告で示されている約32%よりやや低値であった(文献2).一方,先行研究およびシステマティックレビューでは,院内または30日死亡と関連するリスク因子として,高齢,初期GCS低値,高い収縮期血圧,高血糖,好中球数増加,ICHスコア高値などが示されているが(文献2,3,4),本研究の結果もこれら既知のリスク因子と一致していた.
興味深いのは,本研究では死亡患者のBMIは低く(27.8±8.4 vs 29.8±7.3 kg/m²,p =.0137),高いBMIは死亡に対する保護因子であった(OR 0.963,p =.014)ことである.BMIが高い患者では脳内出血後の死亡リスクが低いという事実は既にいくつか報告されており(文献5-8),obesity paradox(文献7,8)とも呼ばれている.さらに本研究では,若年者ほどBMIが高く,収縮期血圧が低く,ICHスコアも低い傾向を示した.脳内出血におけるobesity paradoxの原因については,①肥満者は栄養予備能が大きく急性期ストレスに強い,②肥満者はもともと慢性的な低度炎症状態にあるので,急性期の過剰な炎症反応が起こりにくい,③肥満者は脳出血患者の中で,より若年であることが多いため,治療介入が積極的になされやすい,④肥満者では,非肥満者に多いサルコペニアや低栄養が少ない,などの可能性が挙げられているが,確定はしていないようである.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Hemphill JC III, et al. The ICH score: a simple, reliable grading scale for intracerebral hemorrhage. Stroke. 32(4):891-897, 2001
- 2) Faghih-Jouybari M, et al. Mortality and morbidity in patients with spontaneous intracerebral hemorrhage: a single-center experience. Curr J Neurol. 20(1):32-36, 2021
- 3) Al-Mufti F, et al. Clinical and radiographic predictors of intracerebral hemorrhage outcome. Interv Neurol. 7(1-2):118-136, 2018
- 4) Rahmani F, et al. Predicting 30-day mortality in patients with primary intracerebral hemorrhage: evaluation of the value of intracerebral hemorrhage and modified new intracerebral hemorrhage scores. Iran J Neurol. 17(1):47-52, 2018
- 5) Rosenberg N, et al. Higher body mass index predicts better outcomes after intracerebral hemorrhage. Neurology 78(1_supplement):P02.207, 2012
- 6) Cao Z, et al. Body mass index and clinical outcomes in patients with intracerebral haemorrhage: results from the China Stroke Center Alliance. Stroke Vasc Neurol 6:424–432, 2021
- 7) Hoffman H, et al. The Obesity Paradox in Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: Results from a Retrospective Analysis of the Nationwide Inpatient Sample. Neurocrit Care. 32(3):765-774, 2020
- 8) Persaud SR, et al. Obesity paradox in intracerebral hemorrhage. Stroke 50:999–1002, 2019
参考サマリー
- 1) 重症の脳内出血に対する外減圧単独手術は死亡を減らす:世界42センターでのRCT(SWITCH試験)
- 2) 長期スタチン服用は脳内出血のリスクを下げる:2,164件の脳内出血を対象としたデンマーク南部の住民ベース研究
- 3) 何が特発性脳内出血のトリガーになるのか:オランダにおけるケース・クロスオーバー研究
- 4) 脳内出血に対するtPA併用低侵襲手術(MISTIE)の効果は,血腫除去量に左右される
- 5) 脳内出血に対する血栓溶解剤を併用したドレナージは有用性を示さず:第三相RCT(MISTIE III)の結果
- 6) DOAC対ワルファリン:脳内出血の予後(J-ASPECT研究から)
- 7) 脳内出血患者の院内死:NOAC対ワーファリン,14万人の解析結果
- 8) 脳出血患者に対する降圧は発症後3時間以内に開始すべき:4個のINTERACT試験11,312症例のプール化解析
- 9) 脳室内出血には脳室ドレナージ単独よりも内視鏡下血腫除去+脳室内洗浄の方が予後が良い:中国・湖北大学の98例のRCT
- 10) 脳アミロイド血管症による脳葉内出血の血腫除去術はそんなに怖くはない、でも−−−:738例のシステマティック・レビュー