膠芽腫のmicroRNAリキッド・バイオプシーの精度:15報告551例のメタアナリシス

公開日:

2026年1月7日  

Exploring the Diagnostic Test Accuracy of MicroRNAs as Potential Biomarkers for Glioblastoma: Systematic Review and Meta-Analysis

Author:

Niznik T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of Oklahoma, Oklahoma City, Oklahoma, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41128517]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

リキッド・バイオプシーは,体液中のDNA,細胞外小胞,miRNAなどのバイオマーカーを検出することで,外科的介入を必要としない低侵襲な腫瘍診断が可能となる(文献1).miRNAは,qRT-PCRで検出可能な小さな非コードRNA分子であり,正常細胞ならびにがん細胞で遺伝子発現の重要な調節因子として機能している(文献2).膠芽腫に関連したmiRNAのリキッド・バイオプシーについては既に数多く発表されており,腫瘍の発生,促進,浸潤と関連するいくつかのmiRNAが報告されている(文献3-7).オクラホマ大学脳外科は膠芽腫に対するmiRNAリキッド・バイオプシーの診断精度を評価するため系統的レビューとメタ解析を行った.

【結論】

PRISMAフローチャートに基づき,15本の論文,28件の比較が絞り込まれた.これらの報告に含まれる551名の膠芽腫患者からの868サンプル,および578名の対照からの811サンプルが解析対象となった.28比較のうち23件では血液(血清または血漿)が用いられ,5件では脳脊髄液が用いられた.
プール解析によれば,膠芽腫に対するmiRNAベースの診断の感度は0.84,特異度は0.89であった.これはDNAや細胞外小胞に関する過去の報告よりも高い精度であった.特にmiR-21は最も高い精度(感度0.90,特異度0.95)を示し,膠芽腫の診断および膠芽腫ではない患者の診断除外において極めて有用である可能性が示された.

【評価】

本研究は,これまで報告された膠芽腫に対する体液中miRNA診断の研究結果を体系的にまとめており,臨床的意義は大きい.特に脳幹部のmidline gliomaなど,生検術の侵襲性が高い症例においてリキッド・バイオプシーの有効性が確立されれば,大きな恩恵をもたらすであろう.
本研究のサブ解析では検体やコントロール群の違いについても検討されている.通常,膠芽腫のリキッド・バイオプシーでは,検体は髄液の方が血清よりも精度が良いとされるが,この研究では検体の違いによる統計学的な有意差はみられなかった.著者らはこれを解析対象となる髄液の検体が元々少なかったためと考察している.またコントロール群は,健常者を対照とした場合の方が,グレード2/3のグリオーマ患者を対照とした場合よりも特異度が高かった.
本研究では,いくつかの限界点に留意する必要がある.本研究では,各論文から抽出した2×2分割表(陽性/陰性)をもとに統合解析を行っているが,各研究におけるmiRNA検査の「陽性」のカットオフ値(閾値)は統一されていない.また,サンプル処理方法,検出戦略,内部標準コントロールも研究間で一貫していない.さらに2021年のWHO脳腫瘍分類に準拠した膠芽腫の診断を用いた研究は3本のみであり,解析に含まれる「膠芽腫」の定義自体にも揺らぎがある.著者らは変量効果モデル(random-effects bivariate model)を用いることで研究間のばらつきを調整しようと試みているが,そもそも入力データの基準が不均一であるため,算出された統合感度・特異度の解釈には慎重さが求められる.
しかし,本研究で示唆されたmiR-21リキッド・バイオプシーによる膠芽腫診断の精度は注目すべきであり,今後,対象の腫瘍の定義,検体,測定方法,カットオフ基準を統一した大規模な検証によってその臨床的な意義が確定するものと思われる.さらに,DNAメチローム解析は血液,髄液とも高感度であることが報告されており(文献8,9),miRNA解析との統合により診断能力のさらなる向上が期待される.

   

監修者: 

増田圭亮 鹿児島大学脳神経外科