同じWHOグレードでも,孤立性線維性腫瘍(SFT)の予後は髄膜腫よりも不良:上海医科大学華山病院の187例

公開日:

2026年2月9日  

最終更新日:

2026年2月9日

Long-term follow-up outcomes in intracranial solitary fibrous tumor compared with meningioma: a propensity score matching study

Author:

Ren L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Huashan Hospital, Shanghai Medical College, Fudan University, Shanghai, China

⇒ PubMedで読む[PMID:40882230]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Aug
巻数:143(6)
開始ページ:1467

【背景】

頭蓋内の孤立性線維性腫瘍(SFT)は,髄膜腫に類似した局在や発育を示す稀な腫瘍であるが,その希少さ故に,長期予後に関しては十分明らかになっていない.上海医科大学華山病院脳外科は,2013年から2021年にかけて同施設で摘出術を行ったSFT 187例(男性106例,平均年齢46.6歳)と473例の髄膜腫の予後を比較した.髄膜腫群からは傾向スコアマッチング法でSFTと同数の187例(男性95例,平均49.2歳)を抽出した.SFTのWHOグレードは,1:32.6%,2:50.8%,3:16.6%,髄膜腫のWHOグレードは,1:33.7%,2:47.1%,3:19.2%とその頻度を近似させた.

【結論】

PFSは,髄膜腫群と比較してSFT群は不良であり,特に手術後5年目以降の差は有意であった(p <.0001).各群をWHOグレードで分けても,手術後5年目以降,SFT群は髄膜腫群よりPFSが有意に不良であった.疾患特異的生存率は最初の5年間では両群間に差を認めなかったが,5年目以降ではSFT群が有意に不良であった(p =.025).
SFT群内では,単変量解析では診断時年齢≦57歳,Ki-67指数6%以下,核分裂数15/10 HPF以下,低いWHOグレード,術後放射線治療の実施は,PFSの延長と有意に関連していた.多変量解析では診断時年齢,核分裂数,術後放射線治療がPFSを予測する独立因子であった.

【評価】

頭蓋内の孤立性線維性腫瘍(SFT)はNAB2-STAT6遺伝子融合の結果発生する腫瘍で(文献1),髄膜発生腫瘍の2-4%を占める比較的アグレッシブな腫瘍である(文献2,3).同様の組織像(staghorn様の腫瘍血管など)や臨床像を呈する頭蓋内hemangiopericytoma(HPC)との区別は困難で,2016年のWHO分類ではSFT/HPCと一括して分類されていたが(文献4),2021年のWHO分類ではSFTのみで表記されるようになった(文献5).SFTは核分裂像(mitosis)および壊死の有無に基づき3段階のグレードに分類されている.本研究は,187例という多数の自験SFTを対象に,やはり自験の髄膜腫473例と比較したものである.髄膜腫症例は,予後と関係する可能性がある年齢,性別,腫瘍局在,WHOグレード,腫瘍摘出度,術後放射線照射などの因子を傾向スコアマッチング法で調整し,SFT症例と同一数の187例を抽出して統計学的な比較を行っている.
その結果,SFT群は髄膜腫群と比較して,PFSが悪く,特に術後5年目以降では差が開いた.疾患特異的死亡率も,5年目以降有意に高かった.またSFT群内での多変量解析では,診断時年齢(≦57歳),核分裂数(15/10 HPF以下),術後放射線治療の実施が良好なPFSの独立予測因子であった.本研究では,診断時年齢,核分裂数,術後放射線照射の有無を基にした再発予測モデルを作成した.このモデルによるSFT摘出術後3年,5年,8年における再発の検出の精度(AUC)はそれぞれ0.68,0.77,0.80であった.
SFTに対する術後の放射線治療が生存期間延長効果を有することは既に示唆されているが(文献6,7,8),今回は多数の症例を基にした統計学的手法によってそのことが確認されたことになる.相対的な若年者,核分裂数の多い(グレードの高い)腫瘍では特に丁寧な経過観察と再発例に対する早期の放射線照射が必要と思われる.
一方,頭蓋内SFT症例では局所再発率だけでなく頭蓋外転移率も高い(文献3,9,10).SFTの頭蓋外転移は高いWHOグレードと密接に関連し,OSを短縮させている(文献3).本研究コホートではその頻度は6.42%(12/187)で,初回手術から頭蓋外転移までの期間は1.05-9.39年であった.頭蓋内SFTの転移先臓器として頻度の高い肺や肝臓などを中心とした定期的なスクリーニング検査は特に高グレードの腫瘍については必須であろう.

執筆者: 

有田和徳

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