脳海綿状血管腫の定期的なMRIフォローアップに意義があるのか?:Mayoクリニックの236例

公開日:

2026年2月9日  

The role of surveillance MRI scans in patients with sporadic cerebral cavernous malformations

Author:

Bektas D  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41569669]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

最近のMRIの普及によって,軽症や無症状の脳海綿状血管腫が発見される頻度が増加している(文献1,2).これらの海綿状血管腫の追跡はどのように行うべきであろうか.
Mayoクリニック脳外科は,2015年から2023年に診断された孤発性海綿状血管腫320例のうち,診断時に摘出手術を受けずに経過観察となった患者で,その後に最低1回のMRIが行われた236例を対象に,MRI所見の変化を解析した.初診時,42.8%は無症状で,39.8%は症候性出血を,10.2%はけいれんを,6.8%は局所脳神経症状を呈した.病変サイズは平均12.6 mmで,局在は天幕上皮質内38.1%,脳幹30.9%,天幕上皮質下22.9%であった.

【結論】

236例中,何らかの神経症状出現の理由でMRIをとった68例(28.8%)では,13例(19.1%)に症候性出血が認められた.
一方,定期的なフォローアップ目的でMRIをとった168例(71.2%)では,17例(10.1%)で海綿状血管腫に何らかの進行(主として病変増大かZabramskiタイプの悪化)が認められ,このうち15例(88.2%)は追跡開始後2年以内の発現であった.症候性出血は2例(1.2%)のみに認められた.
多変量解析では,最初の追跡MRIにおける症候性出血出現(15例/236例)の独立したリスク因子は,新規あるいは進行する局所神経症状のみであった(OR 13.73,p <.001).

【評価】

脳海綿状血管腫患者における定期的なフォローアップMRIの有用性については,従来から疑問が呈されてきた(文献3,4,5).本研究でも,無症候性患者に対する定期的なフォローアップMRIでは,10.1%に画像上の進行(病変増大:6.5%,Zabramskiタイプの悪化:6.0%)が認められたが,症候性急性出血を示す画像所見の出現は1.2%にとどまった.一方,何らかの新規神経症状出現の理由でMRIをとった症例では,19.1%に症候性急性出血が認められた.また,局所神経症状の新規出現あるいは悪化は,MRIにおける症候性出血出現の強いリスク因子であった.
この結果を受けて著者らは,既知の脳海綿状血管腫の患者では,新規または増悪する局所神経症状が出現した場合にMRI検査を実施すべきであると述べている.
確かに,このデータから著者らの結論が出てくるのは自然である.しかし,初回診察時,脳海綿状血管腫の診断がつき,その段階での手術が不要と判断された患者さんに,「それでは次に症状悪化があったときにMRIをとりにきてください」とは言いにくい.実際に本論文の著者らの施設でも,初回診断の3~6ヵ月後にフォローアップMRIを実施することが多いようである.また本研究では,新規神経症状発現を根拠としないフォローアップMRIで画像上の進行が認められた17症例のうち,約9割(15例)は追跡開始後2年以内の発現であったとのことであり,神経症状出現がなくても,診断後2年目くらいまでは,患者の安心のためにフォローアップMRIを行いたいような気もする.ただし,本論文の結果を見ると,それ以上の長期にわたって,漫然と年に1回などの定期的なMRIを撮ることは無意味であることが判る.
ちなみに,頭痛や痙攣発作は,単変量解析においても症候性出血出現との有意な関連を示さなかったが(p =.500とp =.274),非典型的かつ遷延性の場合は,選択的にMRIを検討することが妥当であろうと著者らは述べている.
なお,本研究で使用されているZabramski分類では,脳海綿状血管腫のMRI所見の分類法で,Type 1(急性期あるいは亜急性期出血を示す病変:T1で高信号,T2で低信号か高信号),Type 2(中心部はポップコーン様:T1,T2ともに高・低ミックス信号,周辺部はT2*低信号のヘモジデリン・リング),Type 3(慢性期出血:T1,T2とも低信号),Type 4(T2*かSWIのみで低信号を呈する複数のマイクロブリーズ)の4つのタイプに分けている(文献6).

執筆者: 

有田和徳