転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ後90日生存の予測因子:Mayoクリニックの1,546例から

公開日:

2026年2月20日  

Prognostic factors for 90-day survival after stereotactic radiosurgery for brain metastasis patients

Author:

Loron AG  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41569738]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療をはじめとする定位手術的照射(SRS)を考慮するときに,少なくとも照射後数ヵ月は生存し得る患者を対象とすることが多い(文献1).しかしながら,SRS後3ヵ月以内の死亡率は約20%と推定されており,生命予後予測の正確性には課題が残されている(文献2).
Mayoクリニック脳外科は,2015年から2023年に転移性脳腫瘍に対してガンマナイフによるSRSを行った1,546例を後方視的に解析した.この中でSRS後90日未満で死亡した170例(11%)を抽出し,残りの90日以上生存した症例からJaccard距離指標に基づいてマッチングを行い,170例を対照群として抽出し比較した.

【結論】

多変量解析では,KPS <70(OR 17.4,p <.001),全脳照射の既往(OR 6,p =.004),局所神経脱落症状の存在(OR 3.02,p =.003)がSRS後90日未満死亡の有意の予測因子であった.
一方,SRS前の中枢神経病変の進行(新規転移病変の出現や転移性病変の再発など)(OR 0.22,p <.001)および全身癌の制御(OR 0.556,p =.002)は,90日以上生存と有意に相関していた.
これらの諸因子によって構築した予測モデルは,ROC解析で,AUC 0.85,正確度80%,感度87%,特異度71%と高い予測性能を示した.

【評価】

脳転移は癌患者における主要な合併病変および死因の一つであり,癌患者の推定20-40%に発生する(文献3).現在,脳転移に対する治療選択肢には,摘出手術,SRS,全脳照射,化学療法,免疫療法などがある(文献4,5,6).これらのうち,単回あるいは分割SRSは比較的少数で比較的小型の転移巣を有し,とくに3ヵ月を超える生存が見込まれる患者では第一選択の治療とされている(文献1).
本研究は単一施設で実施した,転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療1,546例の後方視的解析で,SRS後90日未満で死亡した170例(11%)と,90日以上生存例89%の中から種々の背景因子を調整して抽出した170例を比較して,SRS後の90日未満の死亡と関連する因子を求めたものである.その結果,KPS <70,全脳照射の既往,局所神経脱落症状の存在は早期死亡の予測因子で,逆にSRS前の中枢神経病変の進行(新規転移病変の出現や転移性病変の再発など)および全身癌の制御は長期生存の予測因子であることがわかった.KPS <70,全脳照射の既往,局所神経脱落症状の存在,全身癌の制御が生存期間と関係することは容易に想像できるが,SRS前の中枢神経病変の進行が長期生存の予測因子であったことは,一見すると矛盾のように思われる.
もしかすると,新規の転移病変が見つかったり,転移性病変の再発が見つかったりするということは,初回転移巣出現から長期間生存していたことを反映しているのかも知れない.
チャールソン併存疾患指数は,90日未満死亡の有意な予測因子ではなかったが,これは,チャールソン併存疾患指数には,頭蓋内転移自体が大きく影響するためと考えられる.
重要なことは,対象例のうち中枢神経病変が原因で死亡したのは,90日未満死亡群で4.1%,対照群7.1%と少なく,全身癌の制御不能が死因と直結したと想像されることである.転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療を考慮する場合は,やはり全身癌のコントロールやKPSを含めた全身状態の正確な評価が必要であることを改めて認識した.

執筆者: 

有田和徳