T2体積に比べてT1体積が小さなIDH変異星細胞腫(グレード2,3)は浸潤性で予後不良

公開日:

2026年4月9日  

Association of a diffuse phenotype on MRI with shorter overall survival in patients with astrocytoma CNS WHO grades 2 and 3

Author:

Weller J  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Hospital, LMU Munich, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:41616295]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

IDH変異星細胞腫(WHOグレード2,3)のうち,よりびまん性=浸潤性の増殖を示すものでは,T2強調像での腫瘍の体積と比べて,T1強調像での体積が小さい(T1/T2比が小さい)可能性がある(文献1,2).このT1/T2比の小さな腫瘍では腫瘍摘出率が低いことも報告されている(文献3).しかし,摘出率とは独立して,T1/T2比が生存期間(OS)と関連するかどうかは判っていない.
この点を明らかにするために,ミュンヘンLMU大学病院脳外科などのチームは,2003年から2021年に生検術でIDH変異星細胞腫(WHOグレード2または3)と診断された119例(グレード2:77例,グレード3:42例)を対象にOSを検討した.

【結論】

未調整解析では,T1/T2比が0.33以下の患者群では0.33を超える患者群と比較してOSは短縮していたが,有意差は認められなかった(144ヵ月 vs 126ヵ月,HR 0.61,p =.09).
傾向スコアマッチング(KPS,CNSグレード,MRIでの造影効果,T2腫瘍体積を調整)により抽出された29ペアの解析では,T1/T2比が0.33以下の患者群では0.33を超える患者群と比較してOSが有意に短縮していた(160ヵ月 vs 132ヵ月,HR 0.44,p =.05).
多変量解析では,OSに影響する有意の因子として残存したのはT1/T2比のみであった(HR 0.48,p =.03).

【評価】

従来から,IDH変異星細胞腫(WHOグレード2,3)における低いT1体積/T2体積比は,腫瘍の浸潤性を反映し,低い摘出率と相関する可能性が指摘されてきた.本稿は,摘出率を除外しても低いT1/T2比(≤0.33)が生命予後に影響を与えるかを検討するために,生検術のみが行われた症例を対象にOSを解析したものである.その結果,低いT1/T2比はやはりOSの短縮と有意に相関し,多変量解析でも低いT1/T2比はOSに相関する唯一の因子であった.また,診断後4年以内に死亡した症例(n =10)におけるT1/T2比の中央値は0.25であった一方,10年以上の生存が確認された症例(n =23)では0.52と有意に高値であった(p =.04).
著者らはこの結果を受けて,T1/T2 ≤0.33は腫瘍の浸潤性増殖を反映し,OSの短縮リスクと関係する可能性があり,このような患者では,より厳密なフォローおよび積極的治療が必要となる可能性があると結んでいる.IDH変異型神経膠腫の予後因子については,従来,MRIにおける造影効果,腫瘍切除率,WHOグレード,CDKN2Aのホモ接合性欠失などの遺伝子変異,年齢などが提唱されているが(文献4-9),結論は得られていない.本研究においても,年齢,WHOグレード,造影効果はいずれも生存と有意な関連を示さなかった.
本研究の対象患者が診断(生検)されたのは2003年から2021年までと長期間にわたっており,このため生検後の治療には一定のプロトコールはなく,放射線のみ23%,テモゾロミドのみ25%,放射線+化学療法11%と様々である.また,IDH変異型神経膠腫に対する治療選択肢として近年導入されたボラシデニブ(vorasidenib)は使用されていない(文献10).
今後は生検あるいは摘出術後の治療を一定化したコホートで,本稿の著者らの発見が検証されることに期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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