中大脳動脈分岐部の動脈瘤にはクリップか血管内治療か:米国ハイボリューム10施設における1,060例

公開日:

2026年4月11日  

Endovascular and Microsurgical Treatment for Middle Cerebral Artery Bifurcation Aneurysms: Experience From 10 High-Volume United States Cerebrovascular Centers

Author:

Monteiro A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciences, University at Buffalo, Buffalo, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41718491]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Feb
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

脳動脈瘤に対する血管内治療は高い有効性を示しているが,中大脳動脈分岐部(MCAb)の動脈瘤に対しては,未だに顕微鏡下クリッピング(MC)の方が安全性,根治性が高いと信じられ,多用されている(文献1).しかし,近年の血管内治療新規モダリティーの登場によっても(文献2-6)MCの優位性は揺るがないのか?
本稿は,米国の大規模脳血管センター10施設で,2008年以降の15年間で治療されたMCAb動脈瘤の1,060例(破裂動脈瘤は336例31.7%)に基づいて,この問題を検討したものである.722例(68.1%)がMC,338例(31.9%)が血管内治療を受けていた.平均年齢は血管内治療群で高かった(60 vs 56.2歳,p <.001).

【結論】

血管内治療の内訳は単純コイリング(SC)134例,ステント併用コイリング(SAC)106例,フローダイバーター(FD)34例,フローディスラプション(FDr)64例であった.破裂動脈瘤はSCで最も多く,広頚動脈瘤はFDで最も多かった(p <.001).
術中合併症としては,SACでは血管攣縮(p =.006)およびデバイス関連合併症(p =.010)が多く,FDでは血栓塞栓性イベントが多かった(p =.047).フォローアップ期間の合併症としてはFDでは一過性脳虚血発作(p =.042)および虚血性脳卒中(p <.001)が多く,SCでは動脈瘤再出血が多かった(p =.027).
即時および最終の動脈瘤閉塞率はMCで最も良好であり(p <.001),これにSACが続いた.

【評価】

本研究はバッファロー大学などの米国の主要なハイボリュームセンター10施設で過去15年間に行われた中大脳動脈分岐部動脈瘤に対する治療1,060例の後方視的解析である.このシリーズでは血管内治療(SC,SAC,FD,FDr)が31.9%を占めており,最近の欧州での多施設研究の報告の17%より多い(文献7).それでも,クリッピングが68.1%と過半数を超えている.現在でもなお中大脳動脈分岐部動脈瘤に対する治療としてクリッピングが選択される理由としては,動脈瘤が表在に位置し良好な術野展開が可能であること,高い閉塞率が得られること,分枝血管の温存が容易であること,血栓塞栓性合併症のリスクが低いことが挙げられる(文献1).
本研究の結果をまとめると,未破裂および破裂いずれの中大脳動脈分岐部動脈瘤に対しても,クリッピングは術中・術後合併症が少なく,治療直後および最終追跡時(クリッピング群約3年,血管内治療群約2年)の血管造影上の閉塞率において優れた成績を示した.例えば対象例全体における最終追跡時のRaymond‑RoyスコアI(完全閉塞)は,クリッピング群で90.6%,血管内治療群で66%であった.すなわち,血管内治療において次々に新規の治療モダリティーが登場してきた今日においても,クリッピングは依然として中大脳動脈分岐部の動脈瘤に対する第一選択の治療法ということになる.ステント併用コイリングは安全性においてクリッピング術に類似していたが技術的難易度が高く,フローダイバーターでは虚血性イベントが多く,単純コイリングでは遅発性再破裂が多かった.
本研究の問題点は破裂例と未破裂例を同一解析に含めている点で,今後,両者を分けての細かな解析が望まれる.

執筆者: 

有田和徳