パイプライン留置後の6ヵ月間のDAPTは必須か:オハイオ大学の257例

公開日:

2026年8月27日  

Safety and Efficacy of 3-Month Versus 6-Month Duration of Dual Antiplatelet Therapy in Pipeline Embolization Treatment of Intracranial Aneurysms

Author:

Cuoco JA  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, The Ohio State University Wexner Medical Center, Columbus, Ohio, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:42384009]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Jul
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

フローダイバージョン用のパイプライン・デバイス(PED)は複数世代にわたり改良されてきたが(文献1-3),今でもPED治療後6ヵ月間のDAPTは標準治療である(文献4).しかし,この6ヵ月という期間は心臓インターベンションの研究から外挿されたものであり(文献5,6),頭蓋内動脈瘤に関する至適継続期間は明らかでない.
オハイオ大学脳外科は2012年から2025年にPEDで治療した257例を対象に,DAPT投与期間がDAPT終了後の合併症の発生率,動脈瘤閉塞率等に与える影響を検討した.DAPTがアスピリンとクロピドグレルの場合,標準用量は,それぞれ325 mg/日および75 mg/日であった.

【結論】

DAPT投与期間は,各症例担当医の方針に基づいて決定された.
257例中,早期終了群(3ヵ月で終了)は155例,標準期間群は102例であった.標準期間群の平均DAPT期間は6.8±2.7ヵ月 であった.DAPT終了後はアスピリン81 mg/日単剤に変更した.
DAPT終了後の重大合併症全体,および個々の重大合併症については2群間で有意差を認めなかった.軽微な血栓塞栓性合併症は早期終了群で有意に少なかった(1.3% vs 8.8%,p =.008)が,個々のイベントには有意差を認めなかった.6ヵ月目のフォローアップ血管撮影における動脈瘤の完全閉塞率は早期終了群で有意に高かった(82.6% vs 70.6%,p =.024).

【評価】

本研究は,後ろ向きのコホート研究で,DAPT投与期間は完全に術者の判断に任せられており,ある術者は一貫して3ヵ月間,別の医師は通常6ヵ月間のDAPTを投与していたとのことである.その結果,PED治療3ヵ月後にDAPTを終了した場合,現在標準とされる6ヵ月間のDAPTと比較して,DAPT終了後の全合併症は早期終了群で有意に少なかった.一方,個々の重大または軽微イベントには群間で有意差を認めなかった.主要有効性評価項目の6ヵ月フォローアップ血管撮影における動脈瘤完全閉塞率は早期終了群で高かった.
注意しなければならないのはDAPT投与期間中のアスピリンの投与量が325 mg/日である点であり,日本で用いられている100 mg/日とは大きな差があることである.また,併用したP2Y12阻害薬は約9割がクロピドグレルであったが,1割の患者では同じくP2Y12阻害薬のチカグレロル90 mg 1日2回が投与されていた.
本研究の結果は,親水性ポリマーを金属繊維表面に結合させたPED SHIELDを用いたフローダイバージョンにおける短期DAPTと標準的6ヵ月DAPTを比較したLimらの研究結果と一致している.これによれば,DAPT中止後の血栓塞栓性または出血性合併症には2群間で有意差を認めなかった(文献7).さらに,近年のメタ解析では,薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション後にDAPTを3ヵ月へ短縮することで,虚血性合併症の頻度を増加させずに大出血リスクを有意に低下させることが示されており(文献8-10),心臓インターベンションの領域ではDAPT期間短縮の方向にあるという.
今後,フローダイバージョン後のDAPTについても投与期間短縮に向けての前向き研究が必須と思われる.

執筆者: 

有田和徳

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