脳幹周囲血腫量:動脈瘤性くも膜下出血における見過ごされてきた予後予測マーカーか?

公開日:

2026年10月2日  

Peritruncal hematoma volume: is it a neglected prognostic marker in aneurysmal subarachnoid hemorrhage?

Author:

Neyazi M  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Medical Faculty and University Hospital Düsseldorf, Heinrich-Heine-University Düsseldorf, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:42030566]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Apr
巻数:145(2)
開始ページ:416

【背景】

くも膜下出血の程度と拡がりは患者の転帰と強く相関するため,Fisherスケール(FS)や改変Fisherスケール(mFS)などの実用的なCTスケールが日常臨床で広く用いられている(文献1,2).しかしこれらの評価法はいずれも,脳幹が極めて重要な機能を有するにも関わらず脳幹周囲血腫の存在を考慮していない.
デュッセルドルフ大学脳外科は,2012年からの10年間で経験した動脈瘤性くも膜下出血675例を対象に,脳幹周囲くも膜下腔(脚間槽,橋前槽,延髄前槽,大槽)および近接した脳室(第3・第4脳室)の血腫量を測定し,各セグメント別の血腫量ならびに脳幹周囲総血腫量と臨床転帰との相関を解析した.

【結論】

脳幹周囲の各くも膜下腔・脳室内の血腫量,および脳幹周囲総血腫量のすべてが機能転帰と強く相関していた(すべてp <0.0001).
脳幹周囲総血腫量の6ヵ月目機能転帰への予測能はmFSやFSを上回った(OR 3.02,mFSはOR 1.74,FSはOR 1.74).
脳幹周囲総血腫量の脳室腹腔短絡術(VPS)依存への予測能はmFSやFSを上回った(OR 2.17,mFSはOR 1.53,FSはOR 1.44).
脳幹周囲総血腫量の遅発性脳虚血(DCI)発生への予測能はmFSやFSを上回った(OR 1.37,mFSはOR 1.32,FSはOR 1.27).
この相関は,FS低グレード(≤2)の患者および前方循環動脈瘤患者でも維持された.

【評価】

本研究では動脈瘤性くも膜下出血患者を対象に,脳幹周囲出血の程度が,早期脳幹損傷,その後の合併症,臨床転帰と相関するという仮説に基づき,初回CT上の脳幹周囲くも膜下腔および脳幹周囲の脳室内の血腫量を系統的に解析したものである.その結果,脳幹周囲血腫量(各セグメント別量ならびに総量)は動脈瘤性くも膜下出血後の転帰と独立して相関し,臨床的に有用な予後指標となる可能性があることが示された.VPS依存やDCI発生についても同様であった.
一方,DSAで確認された大血管攣縮発生と脳幹周囲くも膜下腔の血腫量および脳幹周囲総血腫量は,いずれも有意に相関しなかった.FSスケール,mFSスケールでも同様に相関を認めなかった.
本結果は,FSやmFSのようなテント上中心の現行のCT重症度評価に脳幹周囲血腫成分を組み込むことで,DCI,機能転帰,VPS依存への予測精度を改善できる可能性を示している.現在,本論文の著者らは,この脳幹周囲血腫量を組み込んだextended Fisherスケールを作成し,ドイツ,オーストリア,US,UKからなる国際多施設共同研究を進行中であるという(文献3).この結果に期待したい.

執筆者: 

有田和徳