入院時の一般末梢血液像(SII)で,くも膜下出血後の遅発性血管れん縮の発生を予測出来る

公開日:

2022年3月7日  

Systemic Immune-Inflammation Index Predicts Delayed Cerebral Vasospasm After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage

Author:

Geraghty JR  et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Rehabilitation, University of Illinois College of Medicine, Chicago, IL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34560777]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2021 Nov
巻数:89(6)
開始ページ:1071

【背景】

全身性免疫炎症指数(SII)[血小板数×好中球数/リンパ球数/1000]はいくつかの悪性腫瘍や血管疾患において予後と相関することが示唆されている.イリノイ大学のチームは,くも膜下出血患者の入院時採血におけるSIIが遅発性血管れん縮の予測因子であるか否かを検討した.対象はくも膜下出血の患者246例(年齢中央値55.2歳).このうち166例(67.5%)が,血管撮影あるいは経頭蓋超音波検査によって,入院後平均5.5日に血管れん縮陽性と診断された.

【結論】

入院時のSIIは,血管れん縮群において非れん縮群より有意に高かった(2.3 vs 1.6,p<.001).単回帰解析では,血液像の中で,全白血球数,好中球数,リンパ球数(逆相関),好中球/リンパ球比(NLR),SIIが血管れん縮と相関した.年齢,動脈瘤の部位(前方循環か後方循環か),糖尿病,高脂血症,修正フィッシャー・スケールを調整しても,これらの血液像は引きつづいて血管れん縮と相関したが,その中ではSIIが最も強い予測因子であった(OR 1.4,p=.003).共変数調整後の多変量ROC解析はSIIが血管れん縮を正確に予測することを示した(AUC=0.767,p<.001).

【評価】

SIIは比較的最近研究が進んでいるバイオマーカーで,種々の疾患における全身的な免疫反応を反映している.SII高値はいくつかの癌腫において予後不良と相関しており(文献1,2),グリオーマの中では悪性グリオーマの鑑別に役立つことが報告されている(文献3).また脳出血患者における予後不良予測因子であることも報告されている(文献4).一方,くも膜下出血後急性期(0~3日目)には強い全身的な免疫炎症性反応が引き起こされることが知られている.本研究はこの全身性免疫炎症指数であるSIIがくも膜下出血後の血管れん縮の予測因子となるのかを検討したものである.
その結果,従来から血管れん縮の予測因子として知られている年齢(若年),前方循環,修正フィッシャー・スケールと並んで,血液像すなわち全白血球数,好中球数,リンパ球数(逆相関),好中球/リンパ球比(NLR),SIIがそれぞれ血管れん縮の独立した予測因子であったが,血液像の中ではSIIのOR(1.4)が最も高かった.ROC解析でもSIIが1.924の時,感度63.8%,特異度64.9%で血管れん縮を予測した.
以前から,全身性の炎症性免疫反応とくも膜下出血後の血管れん縮に相関が有ることは指摘されてきていた(文献5,6).また,血小板の活性化がくも膜下出血後の予後不良の因子であることも報告されている(文献7,8).本研究で,それらが統合された指標SIIと血管れん縮との強い相関が改めて確認されたことになる.
今後,既に確立された予測因子である年齢(若年),前方循環,修正フィッシャー・スケールとこのSIIを含めて,統合されたより精度の高い脳血管れん縮の予測スコアを開発することが必要であろう.また,くも膜下出血後の過剰な炎症性免疫反応に対する治療的介入の手法が導入されることも期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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