米国では未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療の半数がフロー・ダイバージョン:米国入院データベースNISに基づく解析

公開日:

2026年10月3日  

National Trends in the Use of Flow Diversion for Management of Intracranial Aneurysms

Author:

Dallas J  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Keck School of Medicine of the University of Southern California, Los Angeles, California, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41504463]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Sep
巻数:99(3)
開始ページ:654

【背景】

フロー・ダイバージョン(FD)は,2011年に米国FDAが近位内頚動脈の大型・巨大動脈瘤に対して承認した治療法であるが(文献1),その後紡錘状・広頚動脈瘤などの非典型的形態や,外科的到達が困難な部位の動脈瘤など,適応外使用も広がっている(文献2-4).
南カリフォルニア大学のDallasらは,近年の米国におけるFDの使用状況を明らかにするために,米国入院支払いデータベースNISを基にした解析を行った.対象は,FD専用のICD-10-PCSコードが導入された2019年10月の翌年,2020年から2022年に血管内治療が行われた9,081例(未破裂5,459例,破裂3,622例).

【結論】

未破裂群では51.7%,破裂群では13.8%にFDが施行されていた.残りの症例はコイル塞栓術であった.未破裂群では3年間でFD使用の増加傾向がみられたが有意差には至らなかった(50.6%→53.5%,p =.07).一方,破裂群では3年間でFD使用が有意に増加した(12.0%→15.6%,p =.01).高齢者では未破裂動脈瘤に対するFD使用率が有意に低かった(p <.0001).
米国国勢調査局による全米地域9区分のうち,カリフォルニア州やワシントン州を含む西部太平洋岸区分では,未破裂群(OR 0.931,p =.002),破裂群(OR 0.932,p =.020)のいずれにおいても他の地域区分と比較してFD使用率が有意に低かった.

【評価】

本研究は2020年から2022年の3年間に米国で行われた脳動脈瘤血管内治療におけるFDの割合を解析したものである.3年間全体では,未破裂群では51.7%,破裂群では13.8%でFDが使用されていた.2022年においては,2020年との比較では破裂,未破裂両群ともFDの割合は増加していたが,破裂群では有意の上昇が認められた.米国を9個の区域に分けて区域ごとのFDの割合を比較すると,未破裂瘤,破裂瘤ともFDの割合は西部太平洋岸区分で最も低く(42.5%と10.8%),ニューヨーク州やニュージャージー州を含む中部大西洋岸区分では高かった(58.8%と12.7%).
米国では未破裂動脈瘤に対する血管内治療におけるFDの割合が現在でも約5割であることを示している.特に未破裂動脈瘤に対しては,多くの術者にとってFDが第一選択になっている可能性がある.破裂動脈瘤ではFDの割合はまだ約14%であるが,約2年の経過でも有意に増加していることが明らかにされており,近年の報告と一致している(文献4-7).今後,デバイスや手技への習熟が進めば,この傾向はさらに進む可能性が高い.
また,本研究では未破裂動脈瘤に対するFD実施症例における退院時不良転帰率は2.44%,脳卒中発生率は0.78%,院内死亡は10例未満と,コイル塞栓術群と同等であった.
一方,本研究ではFDの実施割合に地域差が認められることも示しているが,その原因については明らかにされていない.地域ごとの新規デバイス導入速度,企業活動の違い,高症例数施設の診療方針が地域全体のデータを偏らせる可能性などが示唆されている.また,コイル塞栓術が困難な動脈瘤に対して開頭クリッピングを行う脳外科医のavailabilityが地域により異なる可能性も指摘されている.

執筆者: 

有田和徳