迷走神経刺激による長期効果が高いのは術前てんかん発作頻度が低い群:ケンタッキー大学の356例の追跡結果から

公開日:

2026年10月3日  

Vagus nerve stimulation for refractory epilepsy: a 24-year single-center experience

Author:

Khalid MU  et al.

Affiliation:

UK Comprehensive Epilepsy Program, University of Kentucky, Lexington, Kentucky, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:42320059]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jun
巻数:145(3)
開始ページ:590

【背景】

迷走神経刺激療法(VNS)によって,薬剤抵抗性発作を有する患者の約45-65%で,発作頻度が50-100%減少すると報告されているが(文献1),患者毎の効果の差は大きく,その理由は明らかになっていない(文献2-4).
本研究では,2000年から2023年までにVNS植込みやVNS植込み後の管理の目的で,ケンタッキー大学包括的てんかんプログラムで治療を受けた356例を対象としてVNSの有効性(発作頻度の減少率)に影響する因子を後方視的に検討した.18歳以下の小児群は112例(31.5%),18歳超の成人群は244例(68.5%)であった.植込み時平均年齢は28.3±15.3歳であった.

【結論】

治療転帰はMcHughスコア(発作頻度の減少率,スコア1A:発作完全消失~スコアV:発作増悪)で評価した.全体ではスコア1Aは40.1%であった.植込み時年齢および性別は発作頻度に有意な影響を与えなかった.ベースラインの発作頻度は(A:1日1回超,B:1日1回,C:週3-5回,D:週1-2回,E:月1-2回,F:年1-2回)に分けた.F群は他群より有意に良好な転帰を示し(OR −3.14,p =0.006),E群の転帰も有意に良好であった(OR −1.803,p =0.001).既知の病因や画像所見によるVNS転帰の有意差は認めなかった.F群では,術後に服用している抗けいれん剤の種類も有意に減少した(p =0.026).

【評価】

本研究では二つの重要な所見が得られている.第一に,発作頻度が低い(月1-2回や年1-2回)患者ほどVNS後の発作減少率が大きかった.第二に,発作頻度が極めて低い(年1-2回)患者では,VNS後に抗けいれん剤の服用種類が減少する可能性が最も高かった.
一方,性別,手術時年齢,発作型,焦点発作と全般発作,MRI所見,てんかん罹病期間による転帰の有意差は認めなかった.
わかりやすい結果である.
しかし,本論文の重要な問題点として,ベースライン発作頻度別の患者数,および各群におけるレスポンダー数・レスポンダー率が提示されていないことが挙げられる.とくに最も良好な成績を示した年1-2回群の症例数が不明であり,この群が少数例であった場合,結果の安定性・一般化可能性には慎重な解釈が必要である.
VNSは特に発作頻度が低い患者で高い効果を示すという本研究の興味深い所見は,各群の十分な症例数を確保した大規模コホートで検証されるべきである.

執筆者: 

有田和徳