頭蓋咽頭腫患者における睡眠・覚醒の障害: 22報告1,137例のメタアナリシス

公開日:

2026年2月20日  

Sleep disturbances in craniopharyngioma: a systematic review and meta-analysis

Author:

Liang Q  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Lanzhou University Second Hospital, Lanzhou, China

⇒ PubMedで読む[PMID:41326928]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2025 Dec
巻数:29(1)
開始ページ:4

【背景】

頭蓋咽頭腫は,メラトニン受容体が存在し概日リズムを調節する視交叉上核や,オレキシン産生ニューロンが存在する視床下部外側野に進展・浸潤することで,睡眠・覚醒のホメオスタシスの障害を起こし得る(文献1-4).また摘出手術などの治療介入はそれらをさらに悪化させる可能性がある.本研究は頭蓋咽頭腫患者における睡眠・覚醒障害の実態を明らかにするために行なった22報告1,137例のメタアナリシスである.
全対象患者におけるピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:6点以上の場合は睡眠障害有り)の統合平均スコアは6.76で,睡眠の質の低下が示唆された.

【結論】

客観的および主観的評価を併せたEDS(日中の過度の傾眠)の有病率は50%であった.客観的EDS(日中に行う反復睡眠潜時検査MSLTにおける入眠までの時間が基準より短い)は55%,主観的EDS(Epworth眠気尺度ESS >10)は36%であった.ナルコレプシーの有病率は27%,閉塞型睡眠時無呼吸症候群の有病率は14%であった.健常対照と比較すると,頭蓋咽頭腫患者ではレム睡眠が有意に減少していた.MSLTにおける頭蓋咽頭腫患者の平均睡眠潜時は8.45分であり,健常対照および肥満対照と比較して有意に短縮していた.睡眠中の周期性四肢運動(PLMI)の統合平均は15.7回/時間で,肥満対照より頻回であった.

【評価】

睡眠・覚醒のホメオスタシスに深く関わっている視床下部に進展・浸潤する頭蓋咽頭腫では,睡眠・覚醒リズムの障害,過度の日中傾眠(EDS:excessive daytime sleepiness)がしばしば認められる(文献1,4,5).特に小児の頭蓋咽頭腫患者では,EDSやナルコレプシーが多い(文献4).これらの睡眠障害やEDSは認知機能障害に関係している可能性があり(文献6),患者の就労や学業成績に直接的な悪影響を及ぼすことが示されている(文献7).さらに,睡眠障害はインスリン抵抗性,肥満,糖尿病といった全身性代謝異常のリスク増大と強く関連している(文献8).
本研究は,これまでに報告された頭蓋咽頭腫患者の睡眠・覚醒障害に関する22個の研究のメタアナリシスである.大部分は手術後の患者であった.脳外科医にとって耳慣れない,睡眠の質や日中傾眠に関する指標が並んでいるが,本メタアナリシスの結果を要約すれば,頭蓋咽頭腫患者では,睡眠の質は悪く,日中の傾眠およびナルコレプシーが顕著であるということになる.
本稿を読むと,頭蓋咽頭腫患者の治療後のケアにおいては,気分障害,注意障害,学業成績の低下,社会適応の困難,認知機能の低下が,視床下部機能の低下や下垂体機能の低下の直接の結果ではなく,睡眠・覚醒調節機構の障害を介して生じている可能性も考慮しなければならないことがわかる.場合によっては,睡眠の質向上のための積極的な介入が必要かも知れない.

執筆者: 

有田和徳