GATA3陽性サイレント・コルチコトロフ腺腫は大きな腫瘍径と著明な鞍下方浸潤を特徴とする

公開日:

2026年11月7日  

GATA3-positive silent corticotroph adenomas are characterized by large size and massive infrasellar invasion

Author:

Lamback E  et al.

Affiliation:

Neuropathology and Molecular Genetics Laboratory, Instituto Estadual do Cérebro Paulo Niemeyer, Secretaria Estadual de Saúde, Rio de Janeiro, Brazil

⇒ PubMedで読む[PMID:42829396]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2026 Oct
巻数:29(5)
開始ページ:162

【背景】

サイレント・コルチコトロフ腺腫(SCA)は,ACTH産生細胞系譜に属しながら,臨床的なホルモン過剰症候群を呈さない下垂体腺腫である(文献1,2).近年SCAの中に,ゴナドトロフ(性腺刺激ホルモン産生細胞)の分化に関与する転写因子GATA3を発現する腫瘍群が同定されたが(文献3,4),その臨床像は明らかではない.
本研究は,SCAの中でのGATA3陽性腫瘍の頻度を明らかにし,陰性例との臨床像,画像所見,術後転帰等の差異を検討した.
対象はブラジルの一施設で2013-2025年に摘出手術が行われ,ACTHかつ/またはTPIT陽性でSCAと診断された45例で,免疫組織化学的にGATA3核陽性例を抽出した.

【結論】

SCA 45例中11例(24.4%)がGATA3陽性であった.陽性群は陰性群に比べ男性が多く(72.7%対29.4%,p=0.016),最大腫瘍径(中央値5.3対3.3 cm,p=0.045),腫瘍体積(34.8対11.2 cm³,p=0.023)とも有意に大きかった.巨大腺腫(最大径4 cm以上)の頻度は81.8%対24.2%(p=0.001),著明な蝶形骨洞浸潤は60.0%対10.3%(p=0.004)であり,いずれも陽性群で高かった.一方,海綿静脈洞浸潤,T2微小嚢胞状所見,Ki-67,核分裂像に有意差はなかった.全摘出率は陽性群0%,陰性群32.3%と陽性群で低かった(p=0.041).亜全摘後の残存腫瘍増大率や無増悪生存期間に有意差は認められなかった.

【評価】

近年,SCAの中に,通常はゴナドトロフ腫瘍に認められるGATA3を発現する腫瘍が存在することが報告されている(文献3,4).本研究では,従来一括して扱われてきたSCAの中に,GATA3を発現する腫瘍群が約1/4で認められ,これらの腫瘍はGATA3陰性群と比較して巨大腺腫の頻度が高く,著明な蝶形骨洞浸潤を示すことを明らかにしている.一方,GATA3陽性SCAでは腫瘍径が大きく全摘出率が低いにもかかわらず,術後の残存腫瘍増大率には有意差がなく,画像上の浸潤性と生物学的aggressivenessは必ずしも一致しない可能性が示唆された.今後,多施設共同研究で検証されるべき結果である.
WHO2017年分類では,ゴナドトロフ腫瘍の細胞系譜の同定に用いられた転写因子・補助因子としてSF-1,GATA2,ERαが挙げられ(文献5),GATA3は,2022年のWHO第5版において,ゴナドトロフ腫瘍の免疫組織化学的マーカーとして採用された(文献6).ただし,GATA3は補助的マーカーであり,ゴナドトロフ系譜の中心的マーカーはSF-1である.本研究対象の45例全症例でSF-1,FSH,LHは陰性であり,現段階ではGATA3陽性SCAが,コルチコトロフとゴナドトロフの両系統の性質を併せ持つ中間型細胞に由来するのか,コルチコトロフからゴナドトロフへの細胞系譜転換(transdifferentiation)を経て発生するのかは不明である.また,本研究ではGATA2の発現が検討されておらず,さらにGATA3とTPITが同一腫瘍細胞に共発現することも直接証明されていない.
今後は,同一腫瘍細胞におけるTPIT,GATA2,GATA3,SF-1,ACTHの発現を解析し,GATA3陽性SCA発生の分子機序を解明すべきである.

執筆者: 

有田和徳