公開日:
2026年2月20日最終更新日:
2026年2月20日Stereotactic Radiosurgery Capsulotomy for Intractable Severe Obsessive-Compulsive Disorder: A Systematic Review, Meta-Analysis, and International Stereotactic Radiosurgery Society Practice Guidelines
Author:
Maroufi SF et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA| ジャーナル名: | Neurosurgery. |
|---|---|
| 発行年月: | 2025 Nov |
| 巻数: | Online ahead of print. |
| 開始ページ: |
【背景】
強迫性障害とは,きわめて強い不安感や不快感(強迫観念)の為に,それを打ち消すための行為(強迫行為,例:手を1日に何十回も洗う)を繰り返すものである(文献1,2).約10%は薬物療法などの治療に抵抗性である.重症かつ治療抵抗性強迫性障害に対する外科的な治療のターゲットとして内包前脚が注目されてきた.本稿はガンマナイフなどの定位手術的照射(SRS)による内包前脚切裁術に関するメタアナリシスである.2008年以降に発表された17報告254例(女性38%,平均年齢36.3歳)が対象になった.全例がガンマナイフによる治療を受けていた.治療前のエール・ブラウン強迫性障害スコア(Y-BOCS)は32.8であった.
【結論】
治療後の平均追跡期間は45.7ヵ月(6~139.5).最終追跡時で,Y-BOCSスコアは46.5%低下し(95%CI:36.7-56.3),56.5%の患者で完全反応(Y-BOCSが35%以上改善)が得られ,49.3%が寛解(Y-BOCS ≤16)に至った.全般的機能(GAF)も有意に改善した.抑うつスコア(BDI)の変化は最小限であった.女性,罹病期間の長さ,高年齢は良好な治療反応性と有意に相関していた.
有害事象の多くは軽症で,体重変化(36.1%),一過性の気分変調(15%),頭痛(6.7%)が多かった.放射線壊死(0.9%)や放射線誘発性変化(3.0%)などの重篤な合併症は稀であった.
【評価】
強迫性障害患者における強迫行為には「手を一日に何十回・何百回も洗う」「会社に行く途中に何度も自宅に戻って施錠の確認をする」「誰かに危害を加えたかもしれないという不安が心を離れず,新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり,警察や周囲の人に確認したりする」「物の配置に一定のこだわりがあり,必ずそうなっていないと不安になる」「不吉な数字・幸運な数字に,縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる」などが知られている.強迫性障害の一般人口における生涯有病率は2.5%と稀ではなく,かつ患者の日常生活や社会生活を大きく阻害する重要な疾患である.このためWHOでは,強迫性障害を生活上の機能障害をひきおこす10大疾患の一つにあげている.
強迫性障害の発生機序としては,眼窩前頭皮質,前部帯状回皮,基底核を含む皮質-線条体-視床-皮質(CSTC)回路の異常,および腹側前頭線条体系における機能的結合の亢進が最も広く受け入れられている(文献3,4).内包前脚には,これらの強迫性障害と関係している回路を構成する白質線維が存在しており(文献5,6),治療のターゲットとされてきた.強迫性障害に対するSRS(ガンマナイフ)による内包前脚切裁については,既にミネソタ大学のGuptaらが,2024年に11報告180例のメタアナリシスを行い,Y-BOCSが治療前の平均33.3から17.5に低下し(p <.001),完全反応60%,部分反応10%,寛解18%,悪化4%であったことから,ガンマナイフによる内包前脚切裁は強迫性障害に対する有用な治療法であると結論している(文献7).
本稿はジョンズ・ホプキンズ大学のMaroufiらによるメタアナリシスであるが,17報告254例を対象としている.その結果,Y-BOCSは治療前の32.8から平均追跡期間45.7ヵ月の最終追跡時で18.0と46.5%低下し,56.5%が完全反応,49.3%が寛解であった.前報同様,SRSによる内包前脚切裁術が強迫性障害に対して有用な治療法であることを再び証明している.
ただし,本メタアナリシスの対象研究の内訳を見ると,ガンマナイフによる病変作成部位は前脚中間部が8報告,前脚腹側部が7報告,側坐核が1報告であり,内包前脚内での至適なターゲットはまだ確定していないようである.作成病変の至適サイズと併せて至適なターゲットが明確になることを期待したい.
一方,強迫性障害に対しては,従来から内包前脚への深部脳刺激(DBS)も行われており,2022年の34報告352例のメタアナリシスによれば,Y-BOCSは治療後47%低下し,完全反応率66%であった(文献8).また近年では,MRI誘導下集束超音波を用いた内包前脚切裁術も登場しており,良好な治療成績が報告されている(文献9,10).これらの定位的治療手技と比較した,ガンマナイフによる内包前脚切裁術の優位性の検討も必要である.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) 西 大輔 他.強迫症/強迫性障害.厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
- 2) 松永 寿人.強迫性障害の臨床像・治療・予後.精神経誌. 115(9):967-974, 2013
- 3) Moreira PS, et al. The neural correlates of obsessive-compulsive disorder: a multimodal perspective. Transl Psychiatry. 7(8):e1224, 2017
- 4) Gargano SP, et al. A closer look to neural pathways and psychopharmacology of obsessive compulsive disorder. Mini Review. Front Behav Neurosci. 17:1282246, 2023
- 5) Rauch SL. Neuroimaging and neurocircuitry models pertaining to the neurosurgical treatment of psychiatric disorders. Neurosurg Clin N Am. 14(2):213-223, vii-viii, 2003
- 6) Lai Y, et al. Effectiveness and safety of neuroablation for severe and treatment-resistant obsessivecompulsive disorder: a systematic review and meta-analysis. J Psychiatry Neurosci. 45(5):356-369, 2020
- 7) Gupta R, et al. Benefits of stereotactic radiosurgical anterior capsulotomy for obsessive-compulsive disorder: a meta-analysis. J Neurosurg. 141(2):394-405, 2024
- 8) Gadot R, et al. Efficacy of deep brain stimulation for treatment-resistant obsessive-compulsive disorder: systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 93(11):1166-1173, 2022
- 9) Jung HH, et al. Bilateral thermal capsulotomy with MR-guided focused ultrasound for patients with treatment-refractory obsessive-compulsive disorder: a proof-of-concept study. Mol Psychiatry. 20(10):1205-11, 2015
- 10) Chang KW, et al. Long-term clinical outcome of a novel bilateral capsulotomy with focused ultrasound in refractory obsessive-compulsive disorder treatment. Mol Psychiatry. 30(5):1897-1905, 2025
参考サマリー
- 1) 定位手術的照射(SRS)による内包前脚切裁術は強迫性障害に有効:11報告180例のメタアナリシス
- 2) 運動皮質電気刺激(CMS)は有痛性三叉神経ニューロパチーに効く:バルセロナ自治大学の19症例
- 3) ガンマナイフによる脳梁離断:エクス・マルセイユ大学における19例
- 4) 慢性難治性の神経因性疼痛に対する視床外側中心核の収束超音波破壊術(MRgFUS):55例の長期追跡結果
- 5) 発作反応型電気刺激(RNS)は小児や若年者の難治性てんかんにも有用:米国5施設35例の解析
- 6) トゥレット症候群に対する最適な視床刺激部位はどこか
- 7) パーキンソン病に対する集束超音波による視床下核破壊術に関するシャム手術対照ランダム化試験
- 8) 神経因性疼痛に対するガンマナイフによる外側中心核(CLp)病変作成
- 9) 痛みに対する最近の脳深部刺激:システマティックレビュー
- 10) 局所性上肢ジストニア(書痙,音楽家ジストニア)に対する視床腹吻側核破壊手術の効果:東京女子医科大学における171例の経験