公開日:
2026年3月10日Primary or Salvage Stereotactic Radiosurgery for Meningiomas Invading the Superior Sagittal Sinus
Author:
Wei CZ et al.Affiliation:
School of Medicine, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvania, USA| ジャーナル名: | Neurosurgery. |
|---|---|
| 発行年月: | 2026 Feb |
| 巻数: | 98(2) |
| 開始ページ: | 404 |
【背景】
上矢状静脈洞(SSS)に浸潤した髄膜腫の摘出には大きなリスクが伴い(文献1-3),特に再発例ではそのリスクが高い(文献1,4).ピッツバーグ大学のWeiらはSSSに浸潤した髄膜腫に対するガンマナイフ治療(SRS)の効果を検討した.対象は2000年から2022年にガンマナイフ治療を行った自験の上矢状静脈洞浸潤髄膜腫248例(女性152例,67.3%)で,平均年齢は61歳,KPS中央値は80(範囲:60-100)であった.このうち108例には髄膜腫に対する初回治療としてのSRSが実施され,140例に対しては摘出手術(全摘出:51.4%,亜全摘出:48.6%)後に救済的SRS治療が行われた.
【結論】
対象例全体の1年,2年,5年,10年の局所腫瘍制御率(LTC)は,97.7%,94.1%,85.7%,78.3%であった.初回治療SRSは,手術によってWHOグレードIと確認された症例に対する救済的SRSと同等のLTCを示した.腫瘍体積5.2 cc未満の腫瘍では,LTCはより良好であった(HR 5.1,p =.03).SRS後の全生存期間中央値は14.6年であった.頭蓋内腫瘍の進行による死亡例は10例(4%)であった.症候性の放射線有害事象は12例(4.8%)に発生し,SRS後中央値14ヵ月で出現した.SRS前に運動麻痺を呈していた症例のうち,20%でSRS後に運動機能の改善を認めた.
【評価】
上矢状静脈洞(SSS)に浸潤した髄膜腫に対する全摘出術には脳皮質静脈閉塞や出血など大きなリスクが避けられず(文献1-3),特にSSSの後部に浸潤した髄膜腫では,完全摘出(Simpsonグレード1)は実質的に不可能な場合が多い(文献5,6).本研究は,そのように脳外科医にとって極めてチャレンジングなSSS浸潤髄膜腫に対する,ガンマナイフ治療(SRS)の意義を解析したものである.対象は248例で,腫瘍局在は前方(8.06%),中部(35.9%),後方(41.1%),静脈洞交会部(14.9%)であった.腫瘍体積中央値は5.2 cc,辺縁線量中央値は13 Gy(8-20 Gy)であった.
その結果,対象例全体での局所腫瘍制御率(LTC)は10年間で78.3%と比較的良好で,特に小型腫瘍,低悪性度髄膜腫ではLTCが良好であった.腫瘍関連死は4%であった.
特筆すべきは,初回治療SRSは,組織学的にWHOグレードIと確認された症例に対する救済的SRSと同等のLTCを示したことである.すなわち最初からWHOグレードI髄膜腫であることが判っていれば,LTCの観点からは,早期SRSで充分で,摘出術を行う意義はないことになる.
しかし,現実には,画像所見でWHOグレードI髄膜腫を予測することは容易ではない.また,本研究でもSRSによる症候性放射線有害事象は約5%に認められており,最初からSRSを選択するのは躊躇されるところである.実際には,有症候性であったり,MRI上の腫瘍増大が認められるために,最初の治療として摘出術が選択される場合が多い.このような症例では,SSS浸潤部を残して亜全摘出あるいは部分摘出を行い,手術後経過観察を行って,残存腫瘍の増大があればSRSを行うという治療戦略が一般的に採用されているように思われる.
著者らは本研究の結果を基に,神経症状がない,あるいは軽微な症例,とくに腫瘍がSSS後方1/3に浸潤する症例では,初回治療としてSRSを選択すべきであると述べている.
今後は,SSS浸潤髄膜腫に対する初回治療SRSと腫瘍摘出後の増大例に対するSRS(救済SRS)を比較した多施設共同前向き試験が望まれる.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Ding D, et al. Radiosurgery for parasagittal and parafalcine meningiomas. J Neurosurg. 119(4):871-877, 2013
- 2) Wei Z, et al. Long-term survival in patients with long-segment complex meningiomas occluding the dural venous sinuses: illustrative cases. J Neurosurg Case Lessons. 1(20):CASE21116, 2021
- 3) Sughrue ME, et al. Results with judicious modern neurosurgical management of parasagittal and falcine meningiomas. Clinical article. J Neurosurg. 114(3):731-737, 2011
- 4) Materi J, et al. Predictors of recurrence and high growth rate of residual meningiomas after subtotal resection. J Neurosurg. 134(2):410-416, 2021
- 5) Starke RM, et al. Gamma knife surgery for skull base meningiomas. J Neurosurg. 116(3):588-597, 2012
- 6) Raza SM, et al. Perioperative and long-term outcomes from the management of parasagittal meningiomas invading the superior sagittal sinus. Neurosurgery. 67(4):885-893, 2010
参考サマリー
- 1) 無症候性頭蓋底髄膜腫に対して最初からガンマナイフ治療をするのか経過観察するのか:220例のマッチドコホートでの比較
- 2) WHOグレード2髄膜腫全摘後はアップフロント放射線照射か再発確認後放射線照射か:傾向スコアマッチングによる解析
- 3) 海綿静脈洞髄膜腫に対するガンマナイフ:200例の長期的追跡結果から
- 4) 髄膜腫の成長速度と成長曲線:T2信号と石灰化の意義
- 5) 頭蓋内の主要な3部位に出来る髄膜腫の成長速度を左右する因子:大阪大学における313例
- 6) 大きな小脳橋角部髄膜腫を無理して全摘出しなくても良い:エクス-マルセイユ大学の50例
- 7) ガンマナイフによる発癌のリスク:4,905例,8.1年の追跡結果から
- 8) 髄膜腫の好発部位はどこか:602例の半自動化セグメンテーションに基づく3次元ヒートマップ・アトラスで判ったこと
- 9) WHOグレード2髄膜腫に対するアジュバント放射線治療はどのような症例に有効か:マサチューセッツ総合・ブリガム病院における429例
- 10) 偶発(無症候性)髄膜腫に対する手術の合併症率は25%:それでもやりますか?