頭蓋底脊索腫に対する内視鏡下頭蓋底手術成績の向上:ピッツバーグ大学における19年間194例の解析

公開日:

2026年7月28日  

An institutional review of clinical outcomes for skull base chordoma: an analysis of 269 cases over 19 years

Author:

Muthiah N  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvania, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:42398106]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jul
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

頭蓋底脊索腫は斜台などの正中部に発生し,周囲に進展する腫瘍である.このため,外科治療の主軸は腹側からのアプローチによる内視鏡下頭蓋底手術(ESBS)となっている(文献1-3).
本論文は,2001年から2020年までの19年間にピッツバーグ大学でESBSが実施された頭蓋底脊索腫の後方視的解析である.194例の患者に対して計269回のESBSが行われた.内訳は初発腫瘍95手術,再発腫瘍174手術であり,17手術では経鼻アプローチを補完するための開頭術を要した.全腫瘍の平均体積は3.82±4.99 cm³であった.術後の平均追跡期間は49.9ヵ月.

【結論】

平均PFSは,全摘出(GTR)で103.5ヵ月,近全摘出(NTR)で27.1ヵ月,部分摘出(STR)で12.2ヵ月であった.補助放射線治療を考慮しない解析では,GTRはNTR(p <0.001)およびSTR(p <0.001)より有意に長いPFSと相関した.補助放射線治療を受けなかった腫瘍では,GTRは非GTRより有意に長いPFSと相関した(p =0.013).
GTR達成と有意に相関した因子は,放射線治療歴(OR 0.302,治療歴があるとGTR率が低い)および施設経験(OR 1.225,最近行われた手術でGTR率が高い)であった.
GTRの頻度は,2001年から2020年にかけて7.7%から78%へ有意かつ段階的に上昇した(p <0.001).

【評価】

本論文は,ピッツバーグ大学における過去約20年のESBSによる頭蓋底脊索腫の手術成績を明らかにしたものである.その結果,施設経験数の増加に伴って(すなわち,より最近の手術では)手術成績が有意に改善した(7.7%から78%へ)ことが示されている.特に再発腫瘍に対するGTR率の向上は顕著であった.
当然,そうでしょうねという結果であるが,この20年間で手術手技上に具体的にどのような変化があったのかについて明示してほしかった.おそらくこの期間内に下垂体転移術(文献4,5)や対側経上顎術(文献6,7)が導入されているはずなので,これらの新規手術手技がGTR率の向上に与えた影響は大きかったはずである.
逆に,放射線治療歴のある患者ではGTR率が有意に低かった.これは放射線治療を受けた腫瘍では,より進行性あるいはよりアグレッシブな腫瘍であったことを反映しているのかもしれない.
本研究の単変量解析では,初発腫瘍,腫瘍体積が小さいこと,腫瘍が斜台下部あるいは頭蓋頸椎移行部に及ばないこと,内頸動脈の外側へ進展しないこともGTRを予測する因子であった.しかし多変量解析とは,上記の施設経験値の増加と放射線放射が行われていないことの2点のみがGTRの有意の相関因子でなった.
また当然ながら,術後放射線治療の有無にかかわらずGTRはPFSと強く相関しており,これは既報とも一致している(文献8-10).
一方,手術合併症については,48手術(18%)で髄液漏,6手術(2%)で周術期脳虚血,6手術(2%)で長期的な下垂体機能低下症(尿崩症4例,SIADH 2例)を認めた.2001-2015年と比較すると,2016年以降は,再発腫瘍患者の髄液漏が有意に減少していた(23% vs 8%,p =0.008).これは,より積極的な手術と歩調を合わせて頭蓋底再建手技も改善したことを示唆する.現在本論文の著者らが用いているのは,コラーゲン代用シート,大腿筋膜,移植脂肪片,鼻中隔粘膜弁の順に重ね,必要に応じて鼻咽頭粘膜弁を併用する4層再建法であるが,このような確実な再建法の発達が,逆に安心して大きな術野を確保できること,結果としてGTR率の向上につながっているのかもしれない.

執筆者: 

有田和徳