群発頭痛にガンマナイフは効くか:48例のシステマティック・レビュー

公開日:

2022年3月7日  

Gamma Knife radiosurgery for the treatment of cluster headache: a systematic review

Author:

Franzini A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Humanitas Research Hospital -IRCCS, Rozzano, Milan, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:35112222]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2022 Feb
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

国際頭痛協会ならびに欧州頭痛協会によれば難治性慢性群発頭痛は,適切な治療にも関わらず週に3回以上起こる一側性で頭部自律神経症状を伴う深刻な頭痛発作と定義されている(文献1,2).原因としては,三叉神経-副交感神経反射の活性化が想定されている.本稿は,難治性の群発頭痛に対してガンマナイフを行った48症例(5論文)のレビューである(文献3,4,5,6,7).ターゲットは三叉神経34例,翼口蓋神経節1例,両者13例であった.25%は照射前に手術などの侵襲的治療を受けていた.照射部位は三叉神経根のREZ,脳槽部,三叉神経節に近い部位,翼口蓋神経節(翼突管の前方)で,中心線量は70~103 Gyであった.

【結論】

初期治療効果は,60~100%と報告されており,患者個別データでは48例中37例(77%)で認められた.追跡期間中央値12~41ヵ月間に17例が再発し,20例(42%)で効果が持続した.3例では再照射が行われ,疼痛の改善が得られた.三叉神経領域の感覚障害は28例(58%)に,求心路遮断痛は3例(6%)に発生した.
群発頭痛に対するガンマナイフの効果に関しては,照射部位や線量が様々で,オープンラベル試験の報告がわずかにあるのみで,結論は下せないが,短期効果はありそうである.しかし,求心路遮断痛を含む有害事象のリスクも高い.

【評価】

群発頭痛に対する薬物治療としては,発作予防薬としてのカルシウム拮抗薬などの投与と発作急性期のトリプタン投与などが行われている.薬物治療でのコントロールが困難なものに対しては三叉神経のablation,視床下部後方や後頭神経の電気刺激などが行われているが,有害事象と不充分な効果のために一般化してはいない.本研究は過去20年あまりの間に群発頭痛の患者に施行された三叉神経や翼口蓋神経節に対するガンマナイフ照射に関するシステマティック・レビューである.群発頭痛患者におけるガンマナイフ照射の効果のメカニズムとしては,三叉神経内求心性線維の遮断による過剰な三叉神経・自律神経反射のコントロールが考えられている.約3割で実施されていた翼口蓋神経節への照射も中間神経に由来する副交感神経系の抑制による同反射のコントロールが想定されている.本システマティック・レビューの結果,短期効果は77%と比較的高率だが,1~3年後の奏功率は42%と低下していることが明らかになった.また,有害事象として,感覚障害は58%,求心路遮断痛は6%に認められている.著者らは,この高い有害事象率の背景として,群発頭痛患者における三叉神経・自律神経反射の異常そのものが,三叉神経の過剰な放射線感受性をもたらしている可能性を推測している.
時に自死をももたらす激烈な痛みが半分の患者ででも改善すれば,ガンマナイフ治療は患者にとっては大きな福音であるように思われる(文献8).ただし,照射後の感覚障害や別種類の頑痛(求心路遮断痛)の発生がどのくらい患者の生活を脅かすのかという評価は必要である.したがって,この治療法の真の臨床的意義については,非照射群との長期的なQOLの差を比較することによって明らかにされる必要性がある.また,至適な照射ターゲットや線量についても今後検討されなければならない.さらに,脳深部刺激,大後頭神経刺激など他の治療モダリティーとの比較も必要である.

執筆者: 

有田和徳