前庭神経鞘腫に対するアップフロント・ガンマナイフは実用聴力温存に有利か:カロリンスカ大学

公開日:

2026年6月11日  

Hearing Preservation After Upfront Gamma Knife Radiosurgery Versus Initial Conservative Management in Patients With Newly Diagnosed Vestibular Schwannoma: Results From a Prospective Randomized Study

Author:

Bartek J  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Karolinska University Hospital, Stockholm, Sweden

⇒ PubMedで読む[PMID:41925729]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Apr
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

先行して結果が発表されたノルウェイのRCT(V-REX研究)では,比較的小型の前庭神経鞘腫に対して,先ずは経過観察して腫瘍増大の際に定位手術的照射(SRS)や摘出手術を行うという治療戦略よりも,アップフロントでSRSを行った方が,4年後の腫瘍コントロールが良いことが明らかになっている(文献1).では聴力に関してはどうなのか.カロリンスカ大学脳神経外科は2013年から2017年にかけて診断した最大径20 mm以下の新規の前庭神経鞘腫患者52例を,アップフロントでのガンマナイフ定位放射線治療(アップフロントGKRS群)と初期経過観察群に分けてRCTを行った.

【結論】

アップフロントGKRS群24例(辺縁線量12 Gy)と経過観察群28例ではベースライン時点の背景因子(腫瘍体積,Koos分類,聴力など)は均衡していた.
5年追跡時点で,アップフロントGKRS群では全例で腫瘍制御が得られた.一方経過観察群では,28例中15例で腫瘍増大のため何らかの治療(GKRS 14例,開頭手術1例)を必要とした.
実用聴力(Gardner-Robertson分類1-2)は,アップフロントGKRS群では65%の患者で維持されたのに対し,経過観察群では50%で維持されたが,有意差を認めなかった(p =.388).
いずれの群においても本研究期間を通じて重篤な有害事象は認められなかった.

【評価】

前庭神経鞘腫に対するガンマナイフによる定位手術的照射(GKRS)の腫瘍制御効果は十分に確立されている(文献2,3).また先行して結果が発表されたRCT(V-REX研究)では,アップフロントGKRS群で,初診から4年後の腫瘍コントロールが初期経過観察群よりも良好なことが明らかになっている.一方,聴力温存については,アップフロントGKRSと腫瘍増大を確認後のGKRSのいずれが有利であるかについて,なお議論が続いている(文献4-6).
本稿はカロリンスカ大学脳神経外科で実施された小型前庭神経鞘腫に対するアップフロントGKRS vs 初期経過観察のRCTである.その結果,5年追跡時点で,アップフロントGKRS群24例では追加治療を必要とした症例は皆無であったのに対し,経過観察群では28例中15例(53.6%)が腫瘍増大のため新たな治療が必要になった.すなわち,本研究でもV-REX研究同様(文献1),アップフロントGKRSは腫瘍制御率に関して約50%という大きな効果量を示したことになる.
一方,実用聴力は,アップフロントGKRS群では65%の患者で維持されたのに対し,経過観察群では50%で維持されたが,有意差はなかった.V-REX研究でも実用聴力を有する小型前庭神経鞘腫患者を4年間追跡した結果,純音平均聴力および語音弁別能に関してアップフロントGKRS群と経過観察群の間に群間差を認めなかった(文献1).
興味深いことに,本研究では,アップフロントGKRS群では治療後1年時点でGardner-Robertson分類による聴力低下が明瞭に認められた.しかし,その後の数年間は比較的安定した経過を示し,大きな聴力悪化は認められなかった.これに対して初期経過観察群では,追跡期間を通じて徐々に聴力が低下した.もしこの傾向が持続するならば,長期的にはアップフロントGKRS群が有利となる可能性がある.10年以上の長期追跡の結果を待ちたい.

執筆者: 

有田和徳