2型糖尿病を有するもやもや病患者に対するGLP-1受容体作動薬は脳卒中を抑制する

公開日:

2026年10月2日  

Glucagon-like peptide-1 receptor agonists in patients with moyamoya disease and type 2 diabetes mellitus

Author:

Roy JM  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Thomas Jefferson University Hospital, Philadelphia, Pennsylvania, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41962156]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Apr
巻数:145(2)
開始ページ:390

【背景】

もやもや病患者では,糖尿病を併存することが多いとの報告がある(文献1-3).一方,GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者における心筋梗塞および脳卒中リスクを低下させることが示されている(文献4).
本研究は2型糖尿病を合併するもやもや病患者において,GLP-1受容体作動薬が脳卒中や死亡のリスク軽減につながるかどうかを検討したものである.対象は米国を中心とする94の医療機関から提供される電子カルテデータベースTriNetXに登録されたもやもや病+2型糖尿病合併患者2,770例で,476例(17.2%)にGLP-1作動薬の使用歴があり,2,294例(82.8%)では使用歴がなかった.

【結論】

傾向スコアマッチング法によって,使用群,非使用群それぞれ413例を抽出して,解析の対象とした.
GLP-1受容体作動薬を投与されたもやもや病+2型糖尿病合併患者は,非投与群と比較して,虚血性脳卒中リスクが33%低く(HR 0.67,95% CI 0.55-0.81,p <0.001),脳内出血リスクが71%低く(HR 0.29,95% CI 0.15-0.58,p <0.001),死亡リスクが66%低かった(HR 0.34,95% CI 0.21-0.56,p <0.001).

【評価】

本後方視的研究は,もやもや病に2型糖尿病を合併した患者において,GLP-1受容体作動薬投与群では非投与群と比較し,虚血性脳卒中,脳内出血,死亡のリスクがいずれも有意に低いことを示した(いずれもp <0.001).結果は明快であるが,解釈には注意を要する.対象は保険請求用ICD-10コードI67.5で抽出されており,真正のもやもや病と類もやもや病を厳密に区別できず,動脈硬化性頭蓋内動脈狭窄の誤分類も完全には否定できない.実際,著者らもこの点を研究の限界として挙げている.また,2型糖尿病患者を主対象とした既存の臨床試験メタ解析で,GLP-1受容体作動薬により脳卒中リスクが約15-16%低下することが既に報告されている(文献5,6).したがって,本研究で示された効果が2型糖尿病一般に対する心血管保護作用なのか,2型糖尿病合併もやもや病に特異的な効果なのかは不明である.
もやもや病患者では一般対照より糖尿病が多いとの韓国における全国データ(15.4% vs 9.1%)や,小規模ながら2型糖尿病との関連を示した症例対照研究(OR 10.07)もあるが(文献1,7),因果関係は確立していない.さらに,もやもや病感受性遺伝子RNF213を炎症,肥満,インスリン抵抗性と結びつける仮説も提唱されているが(文献8),共通の遺伝子基盤は未だ不明である.
今後,もやもや病の有病率が高い日本を含むアジアでの大規模疫学研究と,2型糖尿病合併もやもや病患者を対象としたGLP-1受容体作動薬のRCTが期待される.

執筆者: 

有田和徳