公開日:
2026年10月3日Association between persisting peritumoral brain edema and seizures as well as worse functional outcome after meningioma surgery: a retrospective study of 218 patients
Author:
Laajava J et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, University of Helsinki and Helsinki University Hospital, Helsinki, Finland| ジャーナル名: | J Neurosurg. |
|---|---|
| 発行年月: | 2026 Jun |
| 巻数: | 145(3) |
| 開始ページ: | 613 |
【背景】
髄膜腫の術前に認められる腫瘍周囲脳浮腫(PTBE)は,術前ならびに術後てんかん発作の危険因子と考えられている(文献1-3).しかし,PTBEが可逆性の血管原性浮腫のみであれば髄膜腫全摘出後はてんかん発作のリスクは消失するはずである.近年,PTBEは血管原性浮腫のみならず反応性グリオーシスも反映している可能性が示唆されている(文献4-6).本研究では,全摘出された髄膜腫の患者において,持続性のPTBE(FLAIR高信号部分)すなわちグリオーシスが術後てんかん発作および機能予後と関連するのかを検討した.
対象はヘルシンキ大学病院脳神経外科で全摘出した髄膜腫のうち術前にPTBEが認められた218例.
【結論】
94例(43.1%)に術前てんかん発作を認めた.このうち27例(28.7%)では術後も発作が持続した.術前に発作のなかった124例中18例(14.5%)に術後新規発作が生じ,初回発作までの平均期間は7.6ヵ月であった.持続性PTBE体積の最高三分位群(中央値12.8 cm)は,最低三分位群(中央値0.5 cm)と比較して新規てんかん発作と強く関連していた(p =0.03,OR 4.7).術後PTBE体積の増加も,新規発作(p =0.008,OR 6.7)および持続発作(p =0.004,OR 4.4)と関連していた.術後EEGは23例で得られ,そのうち10例(43.5%)で持続性PTBE部位にてんかん原性焦点を認めた.
【評価】
本研究によれば,持続性PTBE体積が大きいほど,術後の新規発作のリスクが高かった.術後PTBE体積の増加は,術後の持続発作および新規発作の双方のリスクと関連していた.また,EEGで明確なてんかん原性焦点を認めた症例では,その焦点はすべて持続性PTBE領域に局在しており,この領域自体がてんかん原性を有する可能性が示唆された.さらに,持続性PTBE体積が大きいほど機能回復(KPS)は不良で(p =0.04,1 cm³増加あたりOR 1.03),残存症状が持続する可能性も高かった(p =0.009,1 cm³増加あたりOR 1.1).
本研究結果は,髄膜腫に伴うPTBEは血管原性浮腫のみでなく反応性グリオーシスを反映している可能性を示唆している(文献4-6).ただし病理組織学的な確認がないため,この解釈は推測の域を出ないことには注意が必要である.一方,術後PTBE体積の増加には腫瘍摘出手術時の脳損傷も関与している可能性があるが,術後のてんかん発作持続および新規の発作と関連していた.
臨床的には,術後でもPTBEが大きい患者,あるいは新規にPTBEが発生した患者ではけいれん発作の発症に注意する,あるいは抗けいれん剤投与期間を延長することが妥当かもしれない.症例によっては,反復EEGモニタリングが術後抗けいれん剤投与の計画に役立つ可能性もある.
また,本研究では統計学的な差は示されなかったが,術後けいれん発作がより若年の患者に多い可能性が示唆された.この点に関しては,今後より多数例で検討する必要性がある.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Teske N, et al. Perifocal edema is a risk factor for preoperative seizures in patients with meningioma WHO grade 2 and 3. Acta Neurochir (Wien). 166(1):170, 2024
- 2) Englot DJ, et al. Seizures in supratentorial meningioma: a systematic review and meta-analysis. J Neurosurg. 124(6):1552-1561, 2016
- 3) Seyedi JF, et al. Risk of seizures before and after neurosurgical treatment of intracranial meningiomas. Clin Neurol Neurosurg. 165:60-66, 2018
- 4) Laajava J, et al. Peritumoral T2/FLAIR hyperintense MRI findings of meningiomas are not necessarily edema and may persist permanently: a systematic review. Neurosurg Rev. 46(1):193, 2023
- 5) Laajava J, et al. Peritumoral edema resolves infrequently in surgically treated patients with intracranial meningioma: a retrospective study of 279 meningioma patients. J Neurooncol. 173(1):83-94, 2025
- 6) Burda JE, et al. Reactive gliosis and the multicellular response to CNS damage and disease. Neuron. 81(2):229-248, 2014
参考サマリー
- 1) 分泌性髄膜腫:脳浮腫によるけいれんの頻度の増加
- 2) 髄膜腫における痙攣の予測因子は何か
- 3) 脳外科手術後のてんかん重積の実態とリスク因子:米国医療保険データベースからの20万件の解析
- 4) 髄膜腫におけるTERT変異はWHOグレードとは独立した予後不良因子である
- 5) 非定型髄膜腫は見つかったらできるだけ早く手術すべき:米国NCDBの5,452例の解析から
- 6) 髄膜腫の成長速度と成長曲線:T2信号と石灰化の意義
- 7) rADC値の低い髄膜腫は成長速度が速い
- 8) 髄膜腫の遺伝子変異と組織型は髄膜の胎生原基(発生部位)によって異なっている
- 9) 無症候性髄膜腫の自然史:腫瘍体積増大のリスク因子と症候性増大のリスク因子は違う
- 10) 高齢者の無症状・軽微症状髄膜腫に対する手術のリスク:DPCデータ6,628例の検討から