非機能性下垂体腫瘍では腫瘍摘出度が高いほど術後の副腎皮質機能改善率が高い:Mayoクリニックの450例

公開日:

2026年1月7日  

Impact of the extent of tumor resection on adrenal function recovery after transsphenoidal surgery for nonfunctioning pituitary adenomas

Author:

Shinya Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurologic Surgery, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41202274]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

経蝶形骨洞手術は非機能性下垂体腺腫に対する標準治療であるが,腫瘍による続発性副腎皮質機能低下が手術後どのように変化するかは不明である.
MayoクリニックのShinyaらは,2013年以降の約10年間に,経蝶形骨洞手術が実施された非機能性下垂体腫瘍の450例を対象に,術後の副腎皮質機能回復に関連する因子を検討した.対象症例の年齢中央値は60歳(範囲:18-86),腫瘍径中央値は24 mm(範囲:3-70),KnospグレードIII-IVは36%であった.続発性副腎皮質機能不全は,午前中の血中コルチゾール値 <5 μg/dLかつACTHが低いか正常範囲,あるいはACTH負荷試験に対する反応不良とした.

【結論】

術前,何らかの下垂体前葉機能低下症は55%,続発性副腎皮質機能低下は114例(25%)で認められた.術後,副腎皮質機能の回復は53例(47%)で認められた.副腎皮質機能の回復総数は,術後1ヵ月12%,3ヵ月19%,12ヵ月41%であった.
腫瘍径 <20 mmや腫瘍摘出率 >85%は副腎皮質機能改善と相関した(p =.001とp =.032,log-rank検定).二変量Coxハザード比例分析でも,小さな腫瘍径と腫瘍摘出率は,副腎皮質機能改善と相関した(HR 0.97;p =.043とHR 1.03;p =.001).多変量解析では腫瘍摘出率のみが副腎皮質機能改善と相関した(HR 1.03;p =.019).

【評価】

下垂体前葉機能低下は非機能性下垂体腫瘍の37-85%で認められ(文献1-3),摘出術後は約半数で改善すると報告されているが(文献1,2,4),ホルモン軸毎に差があり,副腎皮質機能の改善率は15-44%とされている(文献1,4,5).一方で,摘出術後の下垂体前葉機能の低下も10-17%で生じるため,下垂体外科医は摘出率と下垂体機能の維持とのバランスで常に悩むことになる(文献6).
本稿は,Mayoクリニックで過去10年間に経蝶形骨洞手術が実施された,非機能性下垂体腺腫450例の後方視的解析である.全摘出は243例(54%)で達成された.腫瘍切除率平均値は91±16%(SD)と高かった.術前に副腎皮質機能不全を有していた114例のうち,53例(46%)で術後の回復が得られた.log-rank検定やCoxハザード比例分析では,腫瘍径(小さい)と腫瘍摘出率(大きい)が術後の副腎皮質機能回復と相関していたが,術後副腎皮質機能との関係がありそうな10因子を対象とした多変量解析では,腫瘍摘出率のみが副腎皮質機能改善と相関した.手術による合併症は髄液漏8例(1.8%),感染症5例(1.1%),要再手術症例9例(2.0%)であった.
この結果からは,副腎皮質機能改善という観点からも,下垂体外科医は合併症に配慮しながら,最大限の腫瘍摘出を目指すべきであることが示される.
問題は,このような手術による新規内分泌障害の頻度と程度である.本研究は術前に認められた副腎皮質機能低下の症例を対象としているので,その点に関しては具体的なデータは示されていないが,考察中では新規内分泌障害は比較的まれであったと述べられている.
今後,高い摘出率(GTR)が,仮に一部の症例で新規の下垂体機能低下症を招いたとしても,全体としては下垂体機能の回復につながるということが,具体的なデータで裏付けられることを望みたい.

執筆者: 

有田和徳