下垂体茎肥厚を示す疾患の鑑別のためのMRIパラメーターの組み合わせ

公開日:

2026年2月20日  

Pituitary stalk thickening: can a multiparametric MRI approach improve etiologic prediction?

Author:

Bıyıklı E  et al.

Affiliation:

Department of Radiology, Marmara University School of Medicine, Istanbul, Turkey

⇒ PubMedで読む[PMID:41524976]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2026 Jan
巻数:29(1)
開始ページ:26

【背景】

下垂体茎肥厚を示す疾患は炎症から腫瘍性病変まで多岐にわたっており,MRIによる原因の診断は決して容易ではない.トルコ国マルマラ大学放射線科は,2012年以降の自験の下垂体茎肥厚を示した病変41例のMRI所見を解析して,画像パラメーターの組み合わせによる診断モデルを作成した.
男女はほぼ同数で,小児例は48.8%であった.病変の内訳は,先天性/特発性9例(ラトケのう胞5例,特発性AVD欠損3例など),炎症性/感染性12例(LCH 3例,Erdheim-Chester病3例,リンパ球性下垂体炎2例など),腫瘍性病変20例(リンパ腫5例,頭蓋咽頭腫4例,胚腫3例,転移性腫瘍3例など)であった.

【結論】

下垂体茎の肥厚を示す病変の中で,腫瘍性病変は非腫瘍性病変と比較して下垂体茎の径が大きかった(中央値5.9 vs 3.8 mm,p =.012).T2強調像における信号強度は腫瘍性病変と炎症性病変で差があり,腫瘍性病変は70%が高信号で,炎症性/感染性病変では低信号が多かった(p =.017).上方が広く下方が狭いV型造影パターンは腫瘍性病変で多かった.
下垂体茎の径(厚さ),T2強調像での非低信号(等信号か高信号),V型の造影の組み合わせは腫瘍性病変の予測性能が高かった(AUC:0.848).
一方,下垂体茎の径(薄さ),T2低信号の組み合わせは炎症性病変の鑑別性能が良かった(AUC:0.836).

【評価】

多様な疾患が下垂体茎の肥厚を来し,これらは先天性,炎症性/感染性,腫瘍性病変の3群に分類される(文献1).一方,下垂体茎病変の生検は一般には困難で,術後合併症の可能性も高いので敬遠されることが多い(文献2,3).このためMRIを用いた鑑別が試みられてきたが,依然として困難である.既報では画像所見のみならず,臨床所見も組み合わせた高い精度の診断モデルが報告されている(文献4).
本研究は下垂体茎肥厚病変41例を対象とした,MRI所見のみに基づく診断モデル作成のための研究である.
従来から,腫瘍性病変では非腫瘍性病変よりも下垂体茎が大きいことが報告されている(文献2,4,5).カットオフ値としては5.3 mm,6.5 mmなどが提案されているが,本研究では4 mmをカットオフとした場合,感度96.3%,特異度55.6%で腫瘍性病変を診断しえた.下垂体茎肥厚の原因と造影パターンとの関係については,先行研究では先天性疾患で円形パターンが多いとの報告があるが(文献1),本研究対象でもそのことが確認できた.一方,本研究では腫瘍性病変で最も多かったのはV字型であった.また本研究では,T2強調像では腫瘍性病変の多くが高信号であった.
本研究結果によれば,これらの特徴的なMRI所見,すなわち下垂体径の大きさ,T2強調像での信号強度,造影パターン(V字型かどうか)の組み合わせのみで,腫瘍性病変,あるいは炎症性病変を高い精度で診断できたという.
多施設大規模コホートで検証されるべき重要な提案ではある.
しかし,下垂体茎の肥厚性病変は,やはり性・年齢・臨床像と強く関係しているので,本稿の著者らが提案しているいくつかの特徴的なMRI所見ならびにその組み合わせモデルとともに,臨床的諸因子も考慮に入れて診断率を向上させるべきであろう.

執筆者: 

有田和徳