カベルゴリン治療中のプロラクチノーマ患者では衝動性が亢進し,強迫的購買のリスクが上昇する

公開日:

2026年10月2日  

最終更新日:

2026年10月3日

Increased impulsivity and higher odds of compulsive shopping among cabergoline-treated patients with prolactinoma: a case-control study

Author:

Daniel KB  et al.

Affiliation:

Division of Endocrinology, Department of Clinical Medicine, Faculty of Medical Sciences, State University of Campinas, Campinas, Brazil

⇒ PubMedで読む[PMID:42496764]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2026 Jul
巻数:29(4)
開始ページ:130

【背景】

衝動制御障害(ICDs)は病的賭博,病的性欲亢進,強迫性購買,暴食等,有害な結果をもたらすにもかかわらず,特定の行動を行いたいという衝動に抗することができない状態である(文献1).パーキンソン病に対するドパミン受容体作動薬(DA)の投与によってICDsが誘発されることはよく知られている(文献1,2).高プロラクチン血症に対するDA投与でもICDsが誘発されることが報告されているが(文献3-5),その実態は詳細ではない.
ブラジル・カンピーナス州立大学内分泌科は,カベルゴリン投与中のプロラクチノーマ患者131例と健常対照131例を対象として衝動性ならびにICDsを評価した.衝動性はBIS-11質問票を用いて評価した(総得点:30-120点).

【結論】

カベルゴリン使用期間中央値は8年(3ヵ月-30年),投与量中央値は0.5 mg/週(0.25-3.5 mg)であった.
BIS-11スコア中央値は,プロラクチノーマ患者群で対照群より高かった(61 vs 56,p =0.039).高い衝動性を有するBIS-11 ≥60の患者割合もプロラクチノーマ患者群で高かった(59.5% vs 39.7%,p =0.002).多変量調整後も注意性衝動性は患者群で有意に高かった(β =1.11,p =0.025).また患者群では,対照群と比較して強迫性購買のオッズが有意に高かったが(OR =4.47,p =0.015),その他のICDs項目には有意差を認めなかった.

【評価】

本研究は以前から示唆されていたカベルゴリン治療中のプロラクチノーマ患者における衝動性の亢進について,社会人口学的背景をできるだけ類似させた対照群を設定して,詳細に解析したものである.その結果,カベルゴリン治療中のプロラクチノーマ患者では衝動性が亢進し,とくに注意性衝動性のスコアが高く,強迫性購買のオッズが上昇していた.また,プロラクチノーマ患者群の中で,高い衝動性を有するBIS-11 ≥60の患者では,それ未満の患者よりカベルゴリン投与量中央値が高かった(1.0 vs 0.5 mg/週,p =0.021).
オーストラリアにおける多施設横断研究でも,DA治療中の高プロラクチン血症患者では対照群より強迫性購買の頻度が高いことが報告されている(15.9% vs 6.1%)(文献6).
著者らは,これらの衝動性の背景として,中脳皮質辺縁系経路に対するドパミン作動性調節が関与している可能性を挙げている.報酬処理,動機づけ,認知制御に関与する前頭-線条体および辺縁系回路にはD2およびD3受容体が発現しており,衝動性の調節に重要な役割を担っている(文献7).カベルゴリンはD2受容体に高い親和性を持ち,D3受容体にも相当の親和性を持つドパミン作動薬であり,これが衝動的行動の増加との関連を説明し得る可能性があるという(文献8).
なお,DA治療中のプロラクチノーマ患者308例を対象としたトルコにおける多施設共同研究では,なんらかのICDsは17%の患者で認められ,性欲亢進が6.5%で最も多かった(文献9).かたや,本研究における多変量解析では 衝動性購買以外のICDs,すなわち性欲亢進,ギャンブル,パンディング(複雑で反復的な常同行動)の頻度については健常対照との間に差を認めなかった.
一方,本研究における多変量解析では,教育水準が低いことも,BIS-11のすべての領域における衝動性亢進,および強迫性購買(OR =4.52,95% CI 1.46-17.2,p =0.008)と独立相関していた.
本研究の結果に基づいて,カベルゴリン投与中のプロラクチノーマ患者に対してあまねく,衝動性亢進,とりわけ強迫性購買についての注意を喚起すべきなのかは判らないが,少なくとも患者が大きなトラブルに巻き込まれないように注視しておくことは必要のように思われる.その際には,患者の社会的背景を考慮することも必要かも知れない.
いずれにせよ,今後このテーマに関して,日本人を対象とした研究が必要と思われる.

執筆者: 

有田和徳