下垂体腺腫摘出後の続発性副腎不全に対する補充療法が糖代謝と脂質代謝に与える影響

公開日:

2026年10月2日  

The metabolic effects of glucocorticoid replacement therapy in patients with secondary adrenal insufficiency due to hypothalamic-pituitary diseases: results from a retrospective and longitudinal study

Author:

Chiloiro S  et al.

Affiliation:

Facoltà Di Medicina E Chirurgia, Università Cattolica Del Sacro Cuore, Rome, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:42435134]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2026 Jul
巻数:29(4)
開始ページ:124

【背景】

下垂体腺腫(PitNET)において,手術前から続発性副腎不全(SAI)が認められることは多く,腫瘍摘出後に新たに出現することも少なくない.SAIの患者に対するグルココルチコイド(GC)補充療法は生命維持に不可欠である.一方,GCの過剰投与は,糖・脂質プロファイルを悪化させ心血管リスクを上昇させ得るが(文献1-4),その実態は明確ではない.
本研究は,ローマ・ジェメッリ総合病院で手術された下垂体腺腫患者のうち,SAIを示しGC補充療法を受けていた患者70例をSAI群,SAIを伴わない患者70例を対照群として連続登録し,手術後3年経過した段階での糖・脂質プロファイルを後方視的に解析したものである.手術前の年齢中央値は44歳であった.

【結論】

ホルモン産生毎の内訳は非機能性57.9%,GH 20.7%,GH/PRL 4.3%,PRL 12.9%,ACTH 4.3%であった.
手術後3年目の糖代謝悪化はSAI群64.4%,対照群35.6%に認められた(p =0.019).脂質代謝悪化はSAI群56.5%,対照群43.5%に認められた(p =0.033).3年後の糖代謝悪化に関連する主な危険因子は,GC補充療法(OR 2.3,p =0.014),手術前の高い空腹時血糖値(OR 7.6,p =0.04),手術前の耐糖能異常/2型糖尿病(OR 8.6,p =0.016)であった.脂質プロファイル悪化の危険因子はTSH欠損のみであった(OR 2.9,p <0.001).

【評価】

本研究は,手術後SAIを示しGC補充療法を受けた下垂体腺腫患者70例を対象に,SAIを伴わなかった下垂体腺腫患者70例を対照群として,GC補充療法が手術後3年目の糖・脂質プロファイルに与える影響を解析したものである.全例が手術後に治癒と判断され,3年間の観察期間中の再発はなかった.手術前の空腹時血糖異常,耐糖能異常,2型糖尿病の頻度は2群間で差はなかった.本研究では,血清糖代謝指標の悪化,および/または糖尿病治療薬の増量・新規開始を糖代謝悪化と定義している.
その結果,手術後においてSAIを有しGC補充療法を受けていた患者では,SAIのない患者と比較して,手術後3年目の糖代謝悪化の頻度が有意に高いことが明らかとなった.ロジスティック回帰解析では,糖代謝悪化の主な危険因子は,GC補充療法,手術前の高い空腹時血糖,手術前の耐糖能異常/2型糖尿病であった.性別,年齢,GC製剤の種類(コルチゾン酢酸エステルまたはヒドロコルチゾン),ヒドロコルチゾン換算1日量と糖代謝悪化の関連は認めなかった.
本研究の結果から下垂体腺腫患者の術後ケアを行っている臨床家が学ぶべきことは,GC補充療法が糖代謝悪化と相関しうること,特にGC補充開始前から耐糖能異常/2型糖尿病を有する患者でその関連が強いことである.こうした患者では糖代謝異常を早期に検出するため,より厳密なモニタリングが必須で,場合によってはGC投与量の修正,糖代謝異常に対する積極的な介入が必要と考えられる.

執筆者: 

有田和徳