公開日:
2026年3月10日Surgical management in very elderly patients with pituitary adenoma: a multivariable assessment of the surveillance, epidemiology, and end results database
Author:
Gould J et al.Affiliation:
Krieger School of Arts and Sciences, Johns Hopkins University, Baltimore, MD, USA| ジャーナル名: | Pituitary. |
|---|---|
| 発行年月: | 2025 Dec |
| 巻数: | 29(1) |
| 開始ページ: | 18 |
【背景】
85歳を超える超高齢者における下垂体腺腫をどうすべきであろうか?
ジョンズ・ホプキンズ大学のGouldらは,米国人口の26.5%をカバーするがん登録データベースSEERを基に,超高齢者(85歳以上)における下垂体腺腫の摘出術の意義を解析した.2000-2022年に下垂体腺腫として登録された患者のうち75歳以上は3,257例で,このうち75-84歳の高齢者は2,571例,85歳以上の超高齢者は686例であった.
摘出手術を受けた患者の割合は高齢者では30.4%(亜全摘:26.6%,全摘:3.8%)であったが,超高齢者では11.8%(亜全摘:10.8%,全摘:1.0%)と低下した(p <.001).
【結論】
75歳以上の患者全体では,亜全摘出と女性は生存期間延長と相関し,年齢(高齢)は生存期間短縮と相関した.
超高齢者(85歳以上)では亜全摘出群は非手術群と比較して生存期間が有意に長かった(HR =0.58;p =.006).また大きな腫瘍径は生存期間短縮と相関し(HR =1.004;p =.005),女性は生存期間延長と相関した(HR =0.66;p <.001).K-M解析でも超高齢者における亜全摘出は非手術と比較して生存期間を延長させた(p =.0016).
高齢者(75-84歳)でも亜全摘出群は非手術群と比較して生存期間が有意に長かった(HR =0.53;p <.001).
【評価】
本稿は,米国におけるがん登録データベースSEERを基に,75歳以上の患者における下垂体腺腫摘出術の意義を検討したものである.その結果,超高齢者(85歳以上)でも,下垂体腺腫に対する亜全摘出は良好な生命予後と相関していた.また従来の報告と同様に高い年齢は生命予後不良と相関していた(文献1).女性の方が生命予後が良かったが,これは女性の下垂体腺腫ではアグレッシブなものが少なく,良好な内分泌学的環境が維持されやすいことと関係しているのかもしれない(文献2).
高齢者の下垂体腺腫に対する外科治療の意義や特殊性を扱った従来の研究では,対象が65歳以上であったり70歳以上であったりしており(文献3-7),少なくとも日本ではその多くがまだ現役世代として活躍中であり,かなり違和感があった.本研究は75歳以上の患者を対象にしており,特に85歳以上を超高齢者と定義し,この世代に対する外科治療の意義を明らかにした初めての研究であり,その意義は大きい.現在の日本の総人口における85歳以上の割合は5.6%であるが,確かに85歳以上では,元気はつらつで田んぼを耕したり,漁に出ていたりする高齢者はかなり稀で,大部分が虚弱(frailty)と言ってよい.
本稿の著者らはこの研究結果を受けて,下垂体腺腫を有する85歳以上の超高齢者でも,摘出手術,特に亜全摘は生命予後を延長させる利益があり,年齢のみをもって手術の除外基準としてはならないと結論している.一方,全摘出のメリットに関しては症例数が少なく結論は得られなかったとしている.もしかするとこの年齢層の患者群では,無理のない範囲での摘出(亜全摘出)が徹底的な摘出(全摘出)よりも患者の生命予後に与えるメリットが大きいのかもしれない.
本稿で注意すべきなのは,下垂体腺腫を有する患者のなかで摘出手術を受けた割合が,75-84歳の高齢者でも30.4%と決して高くはないのが,85歳以上の超高齢者では11.8%とさらに低下していることで,やはり全身状態等に十分配慮の上,手術適応を決定していることが窺える.
本研究では,全身合併症,併発疾患スコア,虚弱性,手術前後の神経症状や内分泌症状などの因子は解析対象とされてはいないが,今後,そうした因子をも含めた解析が,世界で高齢化率トップの日本で行われることに期待したい.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Spina A, et al, Pituitary adenomas in elderly patients: clinical and surgical outcome analysis in a large series. Endocrine 65(3):637–645, 2019
- 2) Chen C, et al. Incidence, demographics, and survival of patients with primary pituitary tumors: a SEER database study in 2004–2016. Sci Rep 11(1):15155, 2021
- 3) Kinoshita Y, et al. Nonfunctioning pituitary adenomas in elderly patients. J Clin Neurosci. 53:127-131, 2018
- 4) Wilson PJ, et al. Endonasal endoscopic pituitary surgery in the elderly. J Neurosurg. 128(2):429-436, 2018
- 5) Spina A. Pituitary adenomas in elderly patients: clinical and surgical outcome analysis in a large series. Endocrine 65(3):637–645, 2019
- 6) Lobatto DJ, et al. Preoperative risk factors for postoperative complications in endoscopic pituitary surgery: a systematic review. Pituitary 21(1):84–97, 2018
- 7) Freda PU, et al. Risks of pituitary surgery in the elderly. Nat Rev Endocrinol 6(11):606–608, 2010
参考サマリー
- 1) 高齢者における非機能性下垂体腺腫手術にリスクはないか?
- 2) 非機能性下垂体腫瘍手術後のPFSは高齢者で長い:Mayoクリニック
- 3) 高齢者非機能性下垂体腺腫の術後視機能に白内障手術歴が影響する
- 4) 高齢下垂体腺腫患者では白内障手術を受けた患者が多い
- 5) 無症候性非機能性下垂体腺腫は経過観察がよいのか?
- 6) 高齢者における経鼻内視鏡手術はリスクが高め
- 7) 非機能性微小下垂体腺腫は5年間の追跡期間で0.2%だけが視機能障害をきたす大きさになる:過去最大,419例の英国コホート
- 8) 非機能性下垂体腺腫では鞍上部腫瘍体積が1.5mLを超えれば視野障害が100%出現する
- 9) 非機能性下垂体腺腫に対してカベルゴリンを試すべきか:誌上ディベート
- 10) 下垂体腺腫に対する一次治療としてのガンマナイフの効果と下垂体機能障害:1,381例のメタ解析